- これまでの京都市の観光動向
- 毎月発表しているデータ月報について
- データ月報参画施設への特別なフィードバックについて
- データ月報参画のお申込みのご案内
データ月報の解説に入る前に改めてこれまでの京都市の観光動向についておさらいです。京都市が毎年発表している入洛客数ですが、コロナ前の2019年以前は、毎年5,000万人を超えていましたが、2020年には半数以下と激減しています。グレーは日本人を示し、赤は外国人です。現在は勿論外国人は、ほぼゼロという状況です。
ちなみにグラフ中の2020年及び2021年カッコ内の数値は推計値です。十分な調査ができていないため、正確な数値は発表されていませんが、おそらくコロナ禍前から半分以下に減少をしていると推測されます。
私たちが毎月発表しているデータ月報のうち、主なデータをご紹介します。市内の主要なホテルの皆さまから毎月ご協力をいただいて、客室稼働率や外国人比率、そしてスライドには掲載していませんが、客室の平均単価等、様々なデータを発表しています。
直近で発表した2022年6月の客室稼働率は51.0%でした。50%を超えるのは2021年12月以来でおよそ半年ぶりです。ただコロナ禍前までは、80~90%が当たり前という水準でしたので、そこから比べるとまだまだ不足している状況です。とはいえ、80~90%というのは、外国人のお客さまがお見えになった上で達成できていた数字です。したがって、日本人のみで40~50%という稼働率に達しているということは、日本人の需要に関してはコロナ禍前の水準に戻ってきているとも評価することができます。
また、当協会では3か月先の予測にも取り組んでいます。6月時点での2022年7月の予測値は39.4%でしたが、直近のデータによりますと大体45%くらいに落ち着くのではないかと見ています。また、9月の稼働率はかなり高めの予測となっています。今年の9月は3連休が2回続くことを受けて、早めに予約をする観光客が多いためではないかと思われます。このような形で毎月データ月報の発表をしています。
続いて、京都市が発表しているデータと当協会のデータの違いをご説明します。京都市は年に1回、半年遅れで発表しています。一方で当協会は、前月のデータを翌月末までにスピーディに発表しています。その他、特徴を把握した上で、データを活用していただければと思います。
このデータ月報が始まったのは2014年です。開始当時の協力施設は24施設でしたが、直近では107施設まで増加しました。客室ベースでは、京都市内のホテルの半分以上を占めており、かなり精度の高いデータとなったと言えます。また、昨年からは旅館の皆さまにも協力をいただき、現在29施設から旅館統計としてデータを提供していただいています。
また、開始当初はExcelファイルの受け渡しで集計を行っていましたが、現在は資料右側のようなデータ登録システムを開発し、WEBブラウザ上でデータを入力していただけるようになっております。入力いただいた後、当協会で集計をして、皆さまに結果をお戻しをするという仕組みになっております。
集計のスケジュールについて、7月の1ヵ月を例にとってご紹介します。まず7/1頃に前月6月分のデータ入力を依頼し、10日間ほどで締切としています。その後、未入力の施設様への督促や、入力値に不備がある場合の確認などのご連絡を経て、20日頃にはデータを確定し、協会側で細かい分析をして、月末に発表しています。
これらのデータは、ホテルや旅館の皆さまへのご提供はもちろんのこと、メディアの皆さまや大学研究機関、あるいは不動産投資会社の方々にも様々な目的でご利用いただいており、非常に公益性の高い取組みとして全国的にも注目していただいています。
ここからは更に踏み込んだ内容のご紹介です。下のスライドのデータは、毎月の発表には掲載しておらず、統計参加施設の皆さまにだけご提供しているものです。ホテルの価格帯別に色分けした稼働部屋数の推移を表しています。グラフの上の方にグレーの点線で表示しているのが、その月の販売可能客室数です。よって、グレーの点線の一番上まで色が埋まると、稼働率100%を意味します。
グラフの左の方を見ていただくと、コロナ前の2019年は80~90%くらい部屋が埋まっているのが分かると思いますが、コロナ禍になってから、2020年4月~5月はほぼゼロになってしまいました。その後、2021年、2022年とご覧の通り、推移しています。
価格帯が最も低い一番下の緑が半分を占めており、ボリュームゾーンであることがお分かりいただけるかと思います。ただ、コロナ禍になると大幅に稼働が減っているのもこの緑の部分であり、比較的価格帯の低いところがコロナ禍の影響を受けてきたことが分かります。こうした分類別の分析ができるようになったのも、統計開始当初の24施設では、こうした分類別の分析は難しかったですが、いまや100軒を超える施設のみなさまにご協力いただいていることで、より精度の高い分析結果をご提供できるようになってきております。
同様に、価格帯別の客室収益指数(RevPAR)も、データ月報にご協力いただく施設様にフィードバックをしています。この客室収益指数(RevPAR)というのは、客室稼働率と平均客室単価を掛け合わせた指標であり、ホテル業界では最も大切とされています。簡単に言うと、その施設の売上水準に相当する指標です。
コロナ直後の2020年3月~5月あたりは、稼働率がほぼゼロになりましたので、客室収益指数もほぼゼロまで下がっていました。その後、GoToキャンペーンを初めとする様々なキャンペーンがあったことで、価格帯の高い施設を中心に回復していることがお分かりいただけるかと思います。
他にも、立地別、サービス形態別、客室規模別といったように、様々な切り口で比較することが可能です。例えば駅前の施設は、グラフ左側のコロナ禍前に高い客室収益指数を保っていた一方で、右側のコロナ禍になってからだと4分の1程度まで下がっていることが分かります。一方で、「その他」のエリアを見ると、コロナ禍前後での動きが比較的小さく、影響が少ないことが分かります。このような比較をすることで、どういった施設がコロナの影響を受けていたかという評価もできます。
最近は、日毎の稼働率について調査を試行しています。下のグラフは今年のGW以降の客室稼働率を日毎に集計したものです。3年振りの本格実施となった祇園祭の宵山があった7/16には稼働率が90%を超えました。
折れ線グラフは予約率です。それぞれ1ヵ月に1回調査を行っています。日が近づくに連れて予約率が高まっていることがお分かりいただけるかと思います。8月の送り火の日に少しピークが見られることから、8/16の稼働率は高くなることが予想されます。このように、先々の状況のデータを施設の皆さまから随時ご提供いただくことで、即座に最新の状況を把握できるようにしておりますので、こちらの取組にもぜひご注目、ご協力いただければと思います。
これらの取組にご関心をお持ちいただける施設様がいらっしゃいましたら、ページ下部のお問い合わせ先までお気軽にご連絡ください。積極的に皆さまからデータをいただけることによって、より精度の高い分析ができるようになりますので、ぜひとも皆さまのご協力を宜しくお願いいたします。
このレポートは、データ月報に関するウェビナー「宿泊データから読み解く京都観光のこれから」から抜粋してご紹介しています。
各パートのレポートは、それぞれ以下のリンクからご確認ください。
プロフィール
公益社団法人京都市観光協会 DMO企画・マーケティング専門官
京都市出身。京都大学大学院農学研究科修了後、株式会社三菱総合研究所に入社。
リサーチャーとして、官公庁事業の公共政策評価や、航空業界における経済効果分析、東京都を始めとした観光マーケティング業務に従事。2016年、京都市におけるDMO立ち上げを機に、マーケティング責任者として京都市観光協会へ転職。経営戦略の策定、法人サイトの刷新などのコーポレートブランディング、統計データ分析、メディア運営設計などを手がける。
本件に関する問い合わせ先
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