有松 では最後に、ポストコロナの京都観光を考えていく上で、これからどういう点を改善していけばいいと思いますか?
ルディ 京都が担っている大切な役割は日本文化を外国人に伝えること。そしてそこでの文化というのは、決して有名なお寺や神社だけではなく、一般的な人々の日常生活も含まれています。ガイドブックには載っていない身近な生活の中で培われた習慣や文化、その違いに外国の人はすごく惹かれます。マナーについても同じです。日本人にとってあたりまえのことがなにかを伝えることも重要だと思います。
クリシャーニ 初めて日本に来る観光客は少し緊張しているんじゃないかと思っています。観光客には、お寺やお店などの観光地をよく案内されますが、公園の芝生でお茶を飲むとか、そういうリラックスができる場所をもっとガイドしてくれたらうれしいと思います。
セスカ わたしたちのような京都在住の外国人が、もっと地域との交流を深めた方がいいのではないでしょうか。そうすれば地域と外国人観光客との架け橋となり、SNSなどで自国の人たちに京都の深い情報を発信する窓口になることもできます。やはり自分と同じ国の人間からの情報であればそれが一番伝わりやすいと思うので。日本に住んでいる外国人と地域の人々との異文化交流をより深められればいいなと思っています。
有松 そういう視点でいえば、観光情報の発信だけでなくマナーやルールの伝え方についても、どう伝えるのがよいのかという課題は、われわれ観光事業者だけではなく京都市民のみなさんも感じていることだと思います。先ほど 架け橋という言葉がありましたが、在住外国人の立場から、こうしてくれたらうれしい、こう言ってくれたら分かりやすいといったことはありますか?
ジュリア 少なくとも単純に Don’t〜みたいな言い方、〜しないでくださいと言われると、子ども扱いされているような気持ちになります。わたしはひとりの大人であり、自分で考えて行動できる人間だと思っています。そこへ これしないでね、あれしないでねといちいち警告されると小学校の先生に叱られているような気持ちになってしまいます。
クリシャーニ そうですね。とくに初めて日本に来る外国人観光客は、日本の生活習慣やマナーについてはなにも知りませんから、まずは相手に伝えない限り、待っていても直りません。ですから、なるべく早く教えてくれた方が外国人にとっても気持ちがいいのではないかな。
ルディ でも、そもそも伝える機会がないですよね。空港に着いたらマナーガイドみたいなものを渡せればいいのではないでしょうか。かわいいマンガで作ってみるとか。
セスカ 京都人が教える楽しくマナーを学べる動画があればいいと思います。
ジュリア そうした動画やアニメ映像を飛行機の機内映像で流すとか。
プラー 動画をYouTubeにアップして、京都の観光に関わるいろんなウェブサイトに掲載したり、旅行事業者と事前にやり取りする際の確認メールの下にリンクを載せたりして、京都に観光する外国人に何らかの形で必ず見てもらえる仕組みができればいいのではないでしょうか。日本に来る前に予習してくれたらベストだと思いますね。
ルディ なにより日本の正しい文化や習慣、マナーを学ぶのは楽しいことだと伝えないとダメ。ただ マナーを守れと言われると、逆に破りたくなる人もいる。フランス人はルールを破るのが趣味な人もいるからね(笑)。
ジュリア 日本の文化やマナーを学ぶことが楽しくなる仕掛けがあるといいなと思いますね。