公益財団法人京都伝統伎芸振興財団(愛称:おおきに財団) は、芸妓・舞妓減少の危機感から1996年に京都市観光協会が中心となって設立された、花街(かがい)を支援する団体です。
外国人観光客にも人気の「ギオンコーナー」は約3年の休演を経て、2023年3月13日(月)に移転リニューアルオープン!
新たなギオンコーナーについて、これから観光事業者と連携していきたいこと、観光を活用した伝統文化の継承・発展についての思いなど、専務理事の糟谷範子様にお聞きしました。
芸妓や舞妓が集う、お茶屋や置屋があつまる地域のことを「花街(かがい)」と言います。京都には五つの花街(祇園甲部・宮川町・先斗町・上七軒・祇園東)があり、私たち公益財団法人京都伝統伎芸振興財団は、その花街の文化、芸妓・舞妓を支援するための団体です。
かつては2,000名を超えた芸舞妓が90年代に200名弱となったことによる危機感から、1996年に京都市観光協会が中心となって設立されました。
具体的には、各花街への支援、芸妓・舞妓の人材育成、花街文化の普及啓発を行っています。
長く安心して続けていただけるようベテランの芸妓さんに奨励金を出したり、若手の育成として、舞妓さんから芸妓さんに衿替(えりかえ) をする際の着物の新調に補助金を出したり、各花街の運営に助成金を出したりなど。
また、毎年6月には、五花街の芸妓・舞妓が同じ舞台に立つ、五花街合同公演「都の賑い」も主催しています。
それぞれの花街は流派が違い、同じ曲でも舞い方が異なります。「都の賑い」では、各花街の芸妓・舞妓が一斉に舞いを披露しますので、その違いを見ることができ、とても面白いですよ。
五花街のPRとしてはもちろん、それぞれの花街にとっても、他の花街の様子を知ることは刺激になっているようです。
昨年からは、若手の芸妓や舞妓に経験を積んでいただくことを目的とした、五花街合同公演「早春夢舞台」にも力を入れています。
―五花街合同公演「都の賑い」
それ以外の時期にも通年を通して、花街の文化に親しんでいただけるのが「ギオンコーナー 」です。この度、約3年間の休演を経て、2023年3月13日に移転・リニューアルを行いました。
ギオンコーナーは、京舞・茶道・華道・琴・舞楽・狂言・文楽又は能(時期によりどちらか)という、日本の伝統文化・伝統芸能を約1時間のダイジェストで見ることができるステージです。
ギオンコーナーで京舞を披露する舞妓
通年を通して、気軽に花街の文化に親しんでもらうため、毎日2回、18時と19時から上演しています。
舞妓の舞はもちろんですが、そのほかの伝統文化の担い手にとっても、若手の活躍の場となっています。
また、コロナ禍前は連日多くの外国人観光客のみなさんにお越しいただいており、おおきに財団が花街振興を行うための大きな事業の財源でもあります。
リニューアルに伴い、能を演目として追加し、またこれまでできていなかったWebでのチケット購入なども整備しています。
ギオンコーナーで披露している芸能をより深く知りたいという方に対し、本格的な地方さんの唄と演奏による京舞の披露や芸妓さん・舞妓さんとのお座敷遊び体験&写真撮影といったプレミアムな公演、能、狂言、雅楽のワークショップ等体験プログラムなどにも着手できたらと思っています。
富裕層向け宿泊施設の宿泊者限定の公演や、修学旅行生のみなさんなどの団体の方など、ご要望に応じてぜひ色んな事業者さんと連携していきたいです。
「お茶屋さんに一度行ってみたい」という方は多いですが、これは「一見さんお断り」なんですね。お茶屋さんというのは、人となりを知っている方たち同士が長い親戚付き合いをするような場所です。
お座敷遊びをしてみたいということであれば、お料理屋や老舗の旅館などで芸妓・舞妓を呼ぶことができますし、私たちが連携して実施しているふるさと納税の返礼品で、お料理屋さんでのお座敷遊び付きの食事プランなども作っています。MICEや地元企業・団体などに芸妓・舞妓の派遣も行っています。
また、そういった初めて花街の文化に触れるような方々が集まる場所では、「初めてのお座敷遊びの心得」というものを作り、事前に初心者の方にこれだけは守っていただきたいルールをお伝えしています。
花街の文化は、よく知られていない世界だから魅力的だということもあり、PRが難しい部分もありますが、このようなルートもぜひ利用していただき、支援者として花街文化を楽しむ喜びを知っていただきたいです。
それでもやはりまずは、舞踊公演を観に来ていただきたいですね。
みなさんに知っていただきたいことは、芸妓さん・舞妓さんの本質は芸だということです。例えば、野球を見たこともない人がいきなり「あの野球選手に会って話してみたい」というのはおかしいですよね。彼女たちは日々厳しい稽古に励み、芸を磨いています。まずは舞台に足を運んでいただき、彼女たちの芸の素晴らしさを知っていただきたいです。
京都に根付く芸能や文化、美しい街の景観は、多くの人が長い間大切に継承し、守ってきたものです。
かつては時の権力者やお金持ちが文化を支えていた歴史もありますが、いまは観光客のみなさまからの応援が欠かせません。神社やお寺に行くと、近くのお店や会社の名前が書かれた提灯などがずらっと並んでいるのを見たことがありますよね。京都で観光を生業にしている人々も、こうした文化の上に自分たちの商売が成り立っていると自覚しているからこそ、感謝の気持ちを込めて神社やお寺にご奉仕しているのです。
観光客のみなさまに楽しんでいただくことで、私たちも素晴らしい芸能・文化の発展につないでいきたいと思っています。
公益財団法人京都伝統伎芸振興財団(おおきに財団)
https://www.ookinizaidan.com/