ひろし・みやこ同盟特別企画「広島県観光連盟(HIT)×京都市観光協会(DMO KYOTO) HYPPCafe」を開催しました(2024年9月20日(金))

UPDATE :
2024. 10. 18

SUMMARY

「人」そのものにアプローチする新たなコンテンツの紹介を通して、旅において「人」と出会い、交流することの意義や価値について共有されました。「人」をコンテンツの主役や担い手として巻き込んでいく際の工夫点として、ガイドになっていただけそうな方がいる場合は、根気よく定期的にアプローチすること、スポットを開拓する際には、地元の方にストーリーと併せて教えていただくこと、店舗や施設がある場合は、地元の方が利用しやすい雰囲気を作ること等が紹介されました。

日時:2024年9月20日(金)17:00~19:30
会場:エディオンピースウィング広島

プログラム:
(1)イントロダクション

(2)京都×広島パネリストクロストーク
京都と広島の共通点からみた、インバウンド観光の未来を探る
~「人」に焦点を当てたプロダクトやその魅力について~
● 宮田 絵美 氏(まいまい京都事務局 インバウンド担当兼大阪エリアチーフプロデューサー)
● 西澤 徹生 氏(株式会社ニシザワステイ 代表取締役)
● 南 知仁 氏(株式会社JTB広島支店教育営業課 営業担当課長)
● 佐藤 亮太 氏(NPO法人湯来観光地域づくり公社 理事長)
進行:石飛 聡司氏(株式会社mint 代表取締役))

(3)交流会

京都×広島パネリストクロストーク

京都が培ってきた心を、対話を通して触れてもらう「1/KYOTO(キョウトブンノイチ)」
西澤 徹生 氏(株式会社ニシザワステイ 代表取締役)

  • 以前は(株)JTBで働いていたが、現在は独立して約9年が経つ。独立後、京都大学経営管理大学院観光経営科学コースで観光MBAを取得した。私は観光がおもしろいものだと思って、観光業を仕事に選んだ。オーバーツーリズムによって、地元の方が観光客なんてもう来なくてもいいと思ってしまう状況をとても辛く感じ、地元の方も観光客も事業者もみんながハッピーになれる観光を目指すようになった。
  • 現在は、一日1組限定の京町家の宿泊施設を運営したり、コワーキングスペースやコミュニティバーの運営等を行っている。また、事務所がある京都市東山区と連携して定住促進プロジェクトをしたり、京都市観光協会の「インバウンドイノベーション京都」の支援を受けながら観光コンテンツの開発などを行っている。
  • 一棟貸しの京町家は、祖母の家をリノベーションして作った宿で、稼働率は約80%。平均単価は約7万円で、com等で海外のお客様を中心に販売しており、9.7のレビューを維持している。
  • 1階のバーは「海外の観光客が地元の方におすすめを教えてもらえるような場所」をコンセプトに運営しており、朝9時から夜9時まで開けている。最近では、京都市の企業誘致セクションとも連携して、東京のベンチャーキャピタルが京都進出の拠点としてコワーキングスペースに入居している。
  • 「インバウンドイノベーション京都」で支援を受けてできたコンテンツが「1/KYOTO(キョウトブンノイチ)」という商品である。私が厳選した、おもしろいと思う京都の方と対談してもらうコンテンツである。京都に来ると清水寺に行く方が多いと思うが、以前清水寺に行った際に、誰とも喋らずに帰ってきたことが辛いと感じた経験があり、これからは場所を巡る観光から、「人」を巡る観光に変えていきたいと考えている。前職のJTBでは「人々の交流を創造する」という経営理念が掲げられていた。JTBを辞めた今でもそのような考えを持っており、人々の交流がない観光は観光ではないと考えている。これまで京都に来て、持ち帰ってもらうものは物質的なお土産だったと思うが、これからは京都が培ってきたその心を、対話を通して持ち帰ってもらうことをコンセプトにしていきたい。
  • 全身ハイブランドを身につけることにお金を払うクラシックラグジュアリーではなく、本質的なことやサステナビリティなものなど目に見えない無形のものにお金を払うことに価値観をもっているモダンラグジュアリーな方をターゲットにしている。
  • 対話してくれる方は、陶芸家や扇子屋の社長など、「伝統を受け継ぎながら新しい価値をつくることに挑戦をしている方」を一つの基準にして、私がおもしろいと思った方にお願いしている。料金は約3時間で、往復の送迎と通訳ガイド付きで20〜30万円で販売している。

「観光人クエスト」で人と出会い自己変異を起こす旅を
知仁 氏(株式会社JTB広島支店教育営業課)

  • 大分県出身で大学時代から26年ほど広島に住んでいる。大学卒業後、2001年JTBに入社し、広島支店に着任した。今年4月に東京の企画開発教育センターに異動になったが、会社の「ふるさとワーク」という制度を利用し、広島に駐在しながら今の仕事を続けている。入社当時からずっと修学旅行の企画、営業担当など、教育旅行を専門にしている。通常10年ほどで異動するが、20年以上教育旅行の営業をしてきた。約28,000人の中高生の修学旅行を斡旋してきた。
  • 広島での大学時代、アイルランドに1年間留学していたのが私の原体験になっている。自分が教育旅行に携わる中で、子どもたちにどんな旅を提供したいかと考えたとき、自分が経験した、いわゆる地球市民を感じられるような旅を作って提供したいと考えるようになった。これらの経緯から、海外研修を中心に企画しているが、海外に行くことだけでも子どもたちには変化がある。
  • 「人はなぜ旅をするのか」という問いがあるが、特に自分の中にある「美しいもの」「大切にしているもの」を見つけられるのが旅ではないかと思う。そして、人を賢くするものは、「人」と「旅」と「本」だと言われる。人は旅をすることで、人と会って、自己変異を起こして成長していくものだと言われている。
  • 広島には海外から多くのお客様が来ているが、平和を考える機会を求めて広島に来ているように感じている。現在はNPO法人PCVにも所属して着地型の新しい平和学習を企画し、現在では年間1万〜1万5000人の修学旅行生に届けている。これまでは歴史学習として平和学習に取り組む学校が多かったが、我々が提供している平和学習では、広島で平和活動をする若者たちがプログラムを提供している。これらの活動を「ピースダイアログ」と呼んでいる。若者たちとの交流、出会いによって、中高生が自分の深い部分や大切にしているものに気付く内容になっている。
  • 日本全国には、その地域で光り輝いている人がいる。「観光」の語源は諸説あるが、「光」は、本質や本音、真理などの意味があると聞く。本質に光を当てて、自ら輝いているような人のことを「観光人」と設定して、子どもたちが会いに行くという「観光人クエスト」というプログラムを今年4月から本格的に実施している。「観光人」という言葉は造語だが、商標も取っている。

参加者さん、ガイド、訪問先が三位一体となって「好き」を伝播するまちあるきツアー
宮田 絵美 氏(まいまい京都事務局インバウンド担当兼大阪エリアチーフプロデューサー)

  • まいまい京都は、今年で12年目を迎える会社で、京都のまちあるきツアーを企画・実施している。参加費は約4500円から、2〜3時間で参加できるものを提供しており、11月は65コースを展開している。
  • 私は現在、まいまい京都のツアープロデューサーだが、以前は大阪市役所の職員だった。当時、大阪港に来る海外クルーズ船の誘致や、船が来たときのイベントなど担当していた。帰る時にはみんなが笑顔になる仕事であり、以前の仕事とまいまい京都はそこが似ている。
  • まいまい京都では、年間100コース以上のさまざまなミニツアーを展開しており、建築ツアー、サブカルツアー、トラディショナルツアー等の他、自分の好きなパンばかりを紹介してくれる写真家さんのツアー、ユダヤ教会堂でユダヤ教正統派の指導者であるラビさんが語ってくれるツアーなどがある。代表の以倉がよく言う言葉に「好きの伝播を事業化する」というコンセプトがあるが、どれもガイドの方が熱く自分の偏愛について語ってくれる特徴がある。
  • ガイドはこれまで開催したものも含めると総勢600人以上。京都というステージもあるが、そこから派生して、我々がツアー内容で大切にしているのは「人」である。「まいまい」とは、京都の言葉で「ぶらぶらする」という意味で、面白いこと、好きなことを話しながらみんなでぶらぶらする、その中で繋がりができるようなツアーを考えている。我々のスタッフもツアーに同行し、参加者さんと一緒にお酒を飲んだりしながらツアーを進めている。参加者さん、ガイド、訪問先が三位一体となって「好きの伝播」を作ることを目指している。

生態系との調和も含めた新しい平和のあり方を考えるアドベンチャーツーリズム
佐藤 亮太 氏(NPO法人湯来観光地域づくり公社理事長)

  • 愛知県岡崎市出身で広島に住んで13年になる。元々サッカー業界にいたが、東日本大震災をきっかけに広島に移住した。湯来温泉を拠点に活動をしている。湯来町が面白くなることなら何でもやろうという視点で活動しているが、様々なアクティビティをつくることがまちづくりの一つの柱になっている。訪れた方の人生観が変わるような街であり、そうなれるプロダクトを提供できることを意識している。
  • 一番人気のプロダクトは、シャワークライミング。川の中をどんどん上流に向かって登っていき、9メートルの場所から川に飛び込むこともある。自分自身と戦うようなものを組み込んだり、山と川との関係性についての話もしている。この川は原爆ドームともつながっているので、平和という視点で語ったり、普段味わえないような新しい発見を生み出していきたいと考えている。昨年、日本の人気体験ランキングで全国7位に選ばれたこともあってか、京都からわざわざ日帰りで山奥まで来る外国人のお客様もいた。
  • 山奥なので、海外の方にリーチするのはなかなかハードルが高いが、広島で同じような思いで実施している事業者と一緒になってアドベンチャーツーリズムとして高付加価値のあるプロダクトをつくり、集客につなげていきたいとの思いから、別法人も作った。
  • 広島という場所柄、平和というものをプロダクトを通して感じたいという参加者が多い。そうした方々と、戦争と平和という人類視点の文脈だけでなく、生態系との調和も含めた新しい平和を考える機会にできないかと思っている。さまざまなアクティビティを通して、人との出会い、対話があり、これからの平和などを深く考えていくようなツアーを提供したいと考えている。

京都から見る広島の魅力、広島から見る京都の魅力

  • 宮田氏:石飛さんのサイクリングツアーに参加したが、方言が新鮮で、方言で話しかけられると、自分がその一員に受け入れられたような、コミュニティの一部になれたような感じがした。ホスピタリティを超えたものを感じる。
  • 南氏:私は文化は生き方だと思っている。京都の方の生き方をすべて知っているわけではないが、「歴史から生まれてくる文化」に興味がある。
  • 西澤氏:Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島に以前訪れたことがある。広島の方は、広島カープが好きな方が多いし、今回サンフレッチェのスタジアムを訪れてみて、地元愛が強い方が多いというのが魅力に感じている。
  • 佐藤氏:京都には余裕のある空気が流れているように感じている。歴史的な裏付けから自信につながっているのかもしれないが、緩やかな空気が流れているなと感じる。私も京都が好きで何度も訪れているが、鴨川のほとりで読書をするというだけで余裕が流れている感じが私はすごく好き。

コンテンツを作る上で、困ったことや悩んだこと

  • 宮田氏:まいまい京都では、専門家に案内していただくスタイルを取っているので、新しいガイドを発掘するのが難しい。特に今、オーバーツーリズムの問題などもあり、観光商品として定期的にプロダクト化することが大変だという問題もある。その内容を話してほしいガイド候補に交渉をするが、10〜18人のツアーを受け入れるのが大変という声もあり、説得するのが難しい。また、ご相談しても「私なんて…」という返答もあり、まずはスタートしてもらうことが難しい。定期的なコミュニケーションを取ることを意識し、断られた場合も時間を置いてまたお話をするといった形で何とか説得しているが、難しそうな場合は交渉を断念することもある。ツアーとして商品化するためには、喜んで定期的に実施してもらえる方、自信を持って一緒にツアーをプロダクトにして取り組んでいただける方がガイドになっていただく必要があると思う。
  • 南氏:「観光人クエスト」は広島だけでなく、鹿児島や沖縄、長崎など全国で展開をしているので、自分が知っている方だけでプログラムを作っていくのは難しい。地域でエリアコーディネーターをしている方などを通して出来上がるプログラムもあるので、人と人がつながっていくことで、その先の展開が生まれるのだと実感している。
  • 佐藤氏:私の事業内容は人だけでなく自然の力も大きい。ガイドが語りかけて自己変容を引き出すこともあるが、水圧や川の雄大な流れなど、自然に身を委ねることで変化することを大事にしている。ガイドを見つけることと同じく、スポットを探すことも難しい。発見したとしても、まず最初に自分が命がけで体験しなければいけないこともある。また、新しい場所は自分たちでは探しきれないので、地元の方の手を借りて探すことが多い。紹介してくれた地元の方が昔から遊んでいた場所だと、その場所のことをよく知っているし、昔からの伝説なども教えていただけるので、体感+αの内容を提供することができる。
  • 西澤氏:運営しているコワーキングスペースやバーなど、ようやく海外の方が戻ってきたところで、Googleマップからの集客が多く、その口コミを見て来訪してもらえるようになった。難しかったのが、海外の方ばかりだと地元の方が来ない場所になってしまうので、この2年間は逆に地元の方を頑張って集客してきた。地元の方やコワーキングスペースの会員さんがいる状況を作った上で、海外の方が入ってこれる雰囲気を作った。現在、海外の方の割合は3割ほどだが、あえて半数を超えないようにしている。京都は特に、地元の方が来る店と海外の方だけが訪れる店とで二極化しているので、コロナ禍でじっくりと地元の方や常連さんが来れる店をつくれたことは大きかった。

今後のさらなる連携に向けて、広島と京都で一緒にできそうなこと

  • 参加者:宮島で着物の着付けの仕事をしている。宮島にも京都にもあるものを考えると、一つは町家だと思う。宮島の町家は、重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。京都の町家と宮島の町家の違いを比べるようなプログラムは良さそうだなと思った。宮島にもかつて遊郭があった。京都には舞妓さん、芸妓さんがいるので、そのあたりの交流も面白そうだなと感じている。
  • 石飛氏:広島と京都のガイドでは、地元感の出し方に違いがあるように感じる。京都は昔からの「積み重ね」について語られることが多く、そこに深みがある街というイメージがある。広島はもちろん歴史もあるが、観光客が求めているのは平和に関することで、時代的には近代を求められるイメージがある。日本全体を俯瞰してみた時に、歴史的な部分から近代の話まで、一貫した流れを一緒に作れるのではないかと感じた。「ジャパンツアー」といった形で連携していけたら面白いかもしれない。
  • 西澤氏:京都に来た観光客にこの後の予定を聞くと、広島に行くという方が多いが、広島のおすすめを伝える事ができず悔しい思いをしている。広島に行くならここに行けばいい等、おすすめを京都から伝えられると、観光客にとっては有益な情報になるのではないかと思うので、まずはそれから始めたい。
    また、先程お話した「1/KYOTO(キョウトブンノイチ)」の広島版として、広島のおもしろいという方と対話する1HIROSHIMA(ヒロシマブンノイチ)」をやってほしいと思った。
  • 南氏:京都、広島へ行く修学旅行は多い。これまでは別物として企画していたが、今後京都と広島を比較できるように繋げられたらいいなと思った。それを繋げる切り口はまだ思い浮かばないが、「観光人クエスト」で一番大切にしていることは「問い」である。問いをふまえて何かに取り組むとモヤっとするものが残る。旅行中だけでなく、旅行後も子供たちが考え続けられるようなきっかけになればいいなと思う。京都と広島で共通の問いだけでなく日本や宇宙の視点に広げて問いを一緒に考えて調べていくのは面白いのではないかと感じている。

クロストークの後は、参加者同士で交流を深める交流会が行われました。

開催後、参加者の皆様からは、

・ やはり『人』 なんだと改めて理解できました。
・ 仕事としてはもちろんですが、パネリストの皆さんの「旅が好き」「おもてなしが好き」「観光が好き」という気持ちがすごく伝わってくるトークセッションでした。私も一事業者として、「好き」を形にしていくことの意義を改めて認識できたと思います。
・ 広島と京都で普段関わることのできない業種・地域の方と交流ができて、とても良かったと感じています。もう少し観光関係の業種の方の参加が増えると嬉しいなと感じました。

といった感想をいただきました。

引き続き、「ひろし・みやこ同盟」の取り組みや、両地域の観光コンテンツ造成支援の取り組みにご注目ください。

<参考>
HYPP
※広島に熱狂的な観光プロダクトを生み出すプラットフォーム
HYPPカフェ 
※観光プロダクト開発に興味がある事業者が、気軽に交流できる場
インバウンドイノベーション京都
※インバウンド向け観光コンテンツ造成支援プログラム
京都インバウンドカフェ
※インバウンド向けコンテンツのあり方を考える交流イベント

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