「ガイドツアーの世界事情と京都事情」をテーマに「第1回京都インバウンドカフェ」を開催しました(2022年8月25日(木))

UPDATE :
2022. 09. 07

SUMMARY

専門家による対談では、コロナ禍前と比べてオンライン予約や直前予約が増えていること、キャンセルポリシーの柔軟化が求められることが話題にあがりました。また、京都(日本)のガイドツアーはカスタマイズ商品が多く、カットオフタイム(手仕舞い)が早いため、旅行先に着いてから現地ツアーを予約したい外国人観光客の需要を取りこぼしている可能性があることが指摘されました。最後に、参加者全員の取組みを共有しました。

2022年8月25日(木)、事業者同士のネットワークづくりを促進しつつ、これからのインバウンド向けコンテンツのあり方を考える交流イベント京都インバウンドカフェを開催しました。当日は、文化施設、飲食店、交通事業者、宿泊施設、旅行業、メディアなど様々な業種の方々にご参加いただきました。

1回目となる今回は、まず事務局から「京都インバウンドカフェ」の趣旨や、インバウンド向け観光コンテンツ造成支援プログラム「インバウンドイノベーション京都」の参画事業者募集について説明した後、「ガイドツアーの世界事情と京都事情」をテーマに、ゲットユアガイド・ジャパン(株)の渡辺眞紀氏、(株)MYKエンタープライズの松浦玲佳氏をゲストにお招きして対談をおこないました。

後半は、参加者の皆さんの自己紹介を兼ねて、現在取り組んでいることや課題等についてお話いただきました。

1.対談「ガイドツアーの世界事情と京都事情」

  – 世界のガイドツアーと京都のガイドツアーの状況

  – 世界のガイドツアーと比較した上での日本(京都)のガイドツアーの課題

  – ガイドの存在価値 ~現地でできる最初の友達~

2.参加者の取り組み共有

1.対談「ガイドツアーの世界事情と京都事情」

ゲットユアガイドは旅ナカの商品に特化した、世界最大級の予約プラットフォームで、特にガイドツアーやチケットが充実しているという特徴があります。一方で、MYKエンタープライズは、京都市の認定ガイドである京都市ビジターズホスト(KVH)と連携し、二条城のオフィシャルガイドツアーなどを実施しており、京都市ならではのガイドツアーやガイドの状況について熟知しています。

お二人からは、まずご自身と会社の紹介をいただいた後、世界と比較した日本や京都のガイドツアーの特徴や課題、デジタル化が進むなかでのガイドの意義などについてお話いただきました。主なポイントは以下の通りです。

世界のガイドツアーと京都のガイドツアーの状況

  • コロナ前にMYKエンタープライズが催行した京都のツアーでは、観光だけではなくてその場所で何か体験するものが人気でお客様の満足度も高かった。
  • ゲットユアガイドの商品では、ガイドツアーや文化体験、フードツアーが人気だった。また、茶道体験など、いわゆる日本文化体験をあえて京都でやりたいというニーズも高かった。
  • ゲットユアガイドは、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアがメインマーケットであるが、これらの地域ではすでに観光ビジネスが復活しているので、現在はコロナ以前より2倍以上の予約が入っているほど回復している。コロナ以前も人気だったガイドツアーは引き続き人気があり、トレンドにそれほど変わりはない。

世界のガイドツアーと比較した上での日本(京都)のガイドツアーの課題

  • 世界全体でみると、ガイドツアー商品と非ガイドツアー商品の売上金額の割合はほぼ同じ。レビュースコアの平均は、非ガイドツアーよりもガイドツアーの方が高くなっている。しかしながら、日本の場合は非ガイドツアーよりガイドツアーの方が売上金額が低く、レビュースコアの平均も低くなっており、改善の余地がある。
  • また、ゲットユアガイドで販売されている日本のガイドツアーはカスタマイズツアーが多い。初めて日本に来る人にとっては、十分な知識がない状態でカスタマイズするのは難しく、ガイドの当たり外れの影響も受けやすい。予め用意されたツアーを用意した方が、ガイドの手配もしやすくなる。カットオフタイム(〆切からツアー催行までの時間)も短くなるため、旅行先に到着してから予約しようとする人の需要を取りこぼすことも無くなる。
  • オンライン予約の増加によって、直前予約と即時予約が加速している。コロナ以前よりも予約数が2倍に増えたのは、そのトレンドを見越した商品が増えたからである。カットオフタイムを短くすることが重要である。
  • 直前予約が多い理由としては、天気の状況をふまえたり、例えば東京から京都に移動する新幹線の中で現地ツアーを予約する人も多いためである。
  • 加えて、コロナ禍で進んだのがキャンセルポリシーの柔軟化である。直前でもキャンセルが可能であったり、キャンセル料がかからない商品でなければ予約が入りにくいということが、事業者のあいだでも認識されたようである。
  • 現地ツアーを予約するタイミングは、欧米でも日本でもツアー催行の3日前以内が約半数を占めている。しかし、日本だけカットオフタイムが明らかに長い。欧米での当たり前に慣れている旅行者が、いざ京都に来てみると当日予約できるツアーが少ないことに驚いてしまうという状況になっている。
  • ガイドを手配する立場からすると、直前予約に対応できるようにしたいという想いはもちろんある。ただ、カスタマイズツアーを提供するにあたっては、お客様の好みやご希望をしっかりと聞きたいので、どうしても余裕をもって予約をしていただく必要がある。したがって、やはり、カスタマイズが不要な定点ツアーの開発が今後の課題である。

ガイドの存在価値 ~現地でできる最初の友達~

  • ルーブル美術館はガイド無しのチケットと、ガイド有りのチケットがあるが、予約数でみると半々になっている。解説してもらいたいというニーズがあることは間違いない。
  • 欧米豪のお客様のあいだには、ガイドの存在は「旅行先での最初の友達」という感覚がある。
  • 二条城のガイドツアーは日本語も英語も両方人気がある。当日その場で予約・参加することもできる。二条城にはイヤホンガイドの販売もある中で、リアルのガイドツアーが必要なのかという議論もあったが、人が対応するからこその面白さがあるということで商品化に至った。人が解説することで、お客様が初めて日本に来たのか、何度も来たことがあるのかに応じて説明内容を変えることができる。
  • イタリアのコロッセオのガイドツアーの人気があるが、見るだけではその魅力を理解することは難しい。京都も同じで、みんながよく知っているが、詳しくはよくわからないという観光資源が多いと思う。だからこそガイドの存在が必要である。
  • ガイドの皆さんはコロナ禍でも勉強して、絶え間ない努力をしている。そういったガイドさんをお客様につなげて、満足していただけるようにしたい。

2.参加者の取り組み共有

後半は、参加者の皆さんの自己紹介を兼ねて、現在取り組んでいることや課題等について、お1人3分程度でお話いただきました。
例えば、英語ができるドライバーや従業員の育成、能楽をわかりやすく知ってもらうための京都在住外国人向けワークショップの開催、インバウンド向けの映像制作、混雑を避けられる朝夕のツアーや食に特化したツアーの考案、京都に来た外国人が気軽にチャットで質問できるサービスの提供など、様々な取り組みの紹介が行われました。
コロナ禍で、事業者同士の横のつながりが持ちづらくなった時間が長く続きましたが、インバウンド再開に向けて、熱い想いをもって準備をされている事業者の皆様が多いことが印象的でした。

開催後のアンケートでは、

  • 「直前予約や緩いキャンセルポリシーが求められることへの対応が課題と認識できました」
  • 「ガイドツアーの世界事情や日本でのガイドの事情がわかったのと同時に、他の事業者さんが、コロナでの困難を乗り越えて、時代に合わせたサービスの提供を目指したポジティブな動きがとてもプラスになりました」
  • 「逆境の中から立ち上がるみなさまのお声を直に拝聴し、勇気をいただきました。繋がりの薄れてしまったこの2年半の苦悩の終わりを感じられ、また一緒に進もう!という決意を新たにしました」

といった感想をいただきました。

 

「京都インバウンドカフェ」は今後も定期的に開催予定です。ご関心がある方は引き続きご注目ください。

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公益社団法人京都市観光協会 企画推進課 マーケティング担当

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