京都市観光協会データ年報(2021年確報)について

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調査結果のポイント

31.1 %

3.4pts

京都市内主要ホテルにおける2021年の客室稼働率は31.1%となり、前年の34.5%を下回った

京都市内主要ホテルにおける2021年の客室稼働率は31.1%となった。前年の34.5%からは3.4ポイントの下落となり、2014年の統計開始以降の最低値を更新した。2020年は、新型コロナウイルスの感染が拡大する直前の1~2月まで外国人観光客による宿泊需要が残っており、夏以降のGoToトラベルキャンペーンの効果もあったため、年間で比較すると2021年のほうが低稼働となった(2022年1月31日に発表した速報値からの修正無し)。

+0.4

56.7pts

2年連続で外国人延べ宿泊数がほぼゼロとなる一方で、日本人の延べ宿泊数は増加し、総数ではほぼ横ばい

京都市内主要ホテルにおける2021年の延べ宿泊数は2,888,755泊となり、前年比0.4%増となった(2019年から2020年にかけての前年比は56.4%減なので、2021年は56.7ポイント改善)。新型コロナウイルス感染症の影響で、一年を通じて外国人客がほぼゼロとなったことで、外国人延べ宿泊数の前年比は95.6%減と2年連続で大きく下落した。一方で、日本人延べ宿泊数は同14.5%増となった。コロナ禍前は外国人客によって早い時期から予約で埋まっていた客室が直前でも予約しやすくなったことに加えて、ワクチン接種や医療体制の強化が進んだことで、日本人客による宿泊が増加したものと考えられる。

-17.8 %

45.2pts

コロナ禍前からの調査対象施設に絞ると、延べ宿泊数は前年比17.8%減、2019年比69.6%減

コロナ禍前から調査対象でかつ現在も営業している京都市内主要ホテル54軒に絞った場合、2021年の延べ宿泊数は、前年比17.8%減、2019年比69.6%減となった(2019年から2020年にかけての前年比は63.0%減なので、2021年あ45.2ポイント改善)。日本人延べ宿泊数は、前年比4.0%減、2019年比38.2%減。外国人延べ宿泊数は、前年比96.9%減、2019年比99.7%減となった。

0.6 %

外国人比率は0.6%と、調査開始以降最低の割合となり、全国平均を下回った

調査対象施設における2021年の外国人比率は0.6%となり、調査開始以降最低となった。これは、観光庁の宿泊旅行調査における全国平均値である1.7%を下回っている。観光を目的とした外国人の入国が認められておらず、東京五輪の参加者の滞在は一部の施設・地域に限られていた事によるものと考えられる。

3,490

18.50%

平均客室単価は前年をわずかに上回るも、客室収益指数は過去最低を更新した

2021年の平均客室単価は11,226円となり、前年の12,422円から下落した。客室収益指数(平均客室単価に客室稼働率を乗じた指標で、1室あたりの売上高に相当する)は3,490円となり、前年の4,283円から18.5%下落して、集計開始以来の最低値を更新した(2022年1月31日に発表した速報値における前年値を修正)。

1.61

0.17日

平均宿泊日数は、1.61日となり前年と同水準、2019年の1.78日からは減少した

2021年の平均宿泊日数は1.61日となり、前年の1.60日と同水準となった。2019年は1.78日であったため、コロナ禍の影響で滞在期間は短くなっている。滞在期間の長い外国人宿泊客の宿泊が少なくなったことが要因だと考えられる。なお、日本人宿泊客のみの平均宿泊日数も1.61日で、2019年の1.46日から0.15日増えた。在宅勤務の普及に伴うワーケーション目的などでの長期滞在利用が増えた事が影響したと考えられる。

1.55

0.26人

一部屋当たり人数は、1.55人となり前年と同水準、2019年の1.81人からが減少した

調査対象施設における2021年の平均宿泊人数は1.55人となり、前年の1.56人と同水準となった。2019年は1.81人であったため、コロナ禍の影響で一部屋当たりの人数は減っている。複数人での宿泊利用が多い外国人による利用が激減したことが要因であると考えられる。なお、日本人宿泊客のみの平均宿泊人数も1.55人で、2019年の1.66人から0.11人減となった。コロナ禍の影響で団体旅行が延期・中止になった事や感染を避けるため少人数での宿泊が増えた事が影響したと考えられる。

26.8

3.2pts

旅館の稼働率は26.8%と2年連続で20%台と低水準となり、一部期間を休業する施設も多かった

市内主要旅館32軒における、2021年4~12月の客室稼働率は26.8%となり、前年の23.6%から3.2ポイント増加したが、2年連続で低水準となった。また、1ヶ月あたりの延べ販売可能客室数は平均15,154室となり、本来販売可能であったと考えられる約2.3万室の6割にとどまった。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が適用される期間に休業する施設が多かったためである。

-59.3 %

【新規調査】修学旅行の宿泊数は、感染拡大により延期・中止が多くなり、コロナ禍前から6割減となった

回答のあった施設16軒(ホテル・旅館)における2021年度の修学旅行の宿泊数は、2019年から約6割減となった。本来、修学旅行シーズンであるはずの5~6月が緊急事態宣言期間となり、下半期に延期や中止となった。緊急事態宣言解除後の10月~12月は、延期分も含めてになった修学旅行が実施されたが、1月以降オミクロン株の感染拡大により、この時期に予定されていた修学旅行が再び中止・延期となった。なお、2022年度(2022年4月~翌2023年3月)の予約状況は、コロナ禍前より23.5%増加している。2021年度に実施予定であった修学旅行が、2022年度に延期されていることも一因と考えられる。

【新規調査】ホテルでは京都府内からの宿泊割合が増えたが、旅館では大きな変化はなかった

コロナ禍前後の宿泊客の居住地の内訳について聞いたところ、回答のあったホテル13軒においては、京都市および京都府からの宿泊客の割合がコロナ禍に入ってから年々拡大していることが分かった。京都府民を対象にした宿泊キャンペーンを利用した宿泊客が増えたためだと考えられる。一方、回答のあった旅館10軒においては、コロナ禍前と比較して大きな変化は無かった。

【新規調査】ホテルでは朝食・夕食付きプランの利用が増え、旅館では素泊まりが増えた

コロナ禍前後の宿泊プランの内訳について聞いたところ、回答のあったホテル16軒においては、コロナ禍前と比較して、朝食・夕食付きプランの利用が増加したことが分かった。宿泊者が感染予防の為に施設内で食事をする傾向が強くなった事が要因として考えられる。一方、旅館10軒においては、コロナ禍前と比較して、素泊まりの割合が増加した。朝食・夕食付プランが標準である修学旅行が減少し、個人客は素泊まりを希望することが多かったためだと考えられる。

3,625

238軒

2021年の市内宿泊施設数は、廃業が新規開業の約2倍となり、12月末時点では前年同月から減少

市内の宿泊施設数は2021年12月末時点で3,625軒となり、前年同月の3,863軒から238軒の減少となった。年間を通して、新規開業228件、廃業466件となり、廃業が新規開業の約2倍となった。長引くコロナ禍で廃業を選択する施設が増加したものと思われる。

宿泊予約サイトにおける販売価格は、春と秋の繁忙シーズン以外はおおむね15,000円弱で推移

2021年の京都市内ホテルにおける予約サイト上での販売価格は、3月末から4月頭にかけて中央値が2万円を超えたものの、それ以降は緊急事態宣言などに連動して下落し、おおむね15,000円弱で推移した。その後、11月下旬の週末は紅葉を目当てにした観光需要を背景に、約24,000円にまで上昇した。

66.9

3.1pts

市内39地点の来街者数の動向は、緊急事態宣言などの影響により2020年から若干減少

スマートフォンの位置情報に基づく市内39地点の来街者の指数(2019年の平均値を100とする)は、2021年は66.9となり、前年の70.0から3.1ポイント減となった。京都駅周辺の来訪者を年代別にみると、コロナ禍前と比較して高齢者の割合が減っているものの、11月は60代以上が35.0%と拡大し、コロナ禍前の水準を上回った。ワクチン接種が進んだことにより、高齢者が安心して旅行できる状況であったためだと考えられる。

-48.9

免税件数は前年から大幅に縮小も、単価の上昇により、免税売上額は前年より48.9%減に留まった

免税件数は前年から95.3%減と大幅に縮小したが、免税単価の上昇により、免税売上額は前年より48.9%減に留まった。一方で、免税以外の売上げを含めた総売上高は、日本人による消費がある程度改善されたため、前年より5.8%増加した。

-50.4 %

京都観光案内所の来所者数は、前年から約半減した

2021年の京都総合観光案内所(京なび)は臨時休業や開所時間の短縮により、来所者数が前年から50.4%減となった。

国内旅行者の訪問意向は、緊急事態宣言の影響で上半期は低迷したが、10月以降は回復傾向になる

2021年の「行こう指数」は、緊急事態宣言の影響で上半期に低迷したが、10月以降は緊急事態宣言が解除されたことで回復傾向にある。それまで長く続いた自粛期間の反動により、旅行意欲が急激に高まったものとみられる。

海外旅行者の訪問意向は、東京五輪の影響で一時的に上がったものの、コロナ禍前の7割減を推移

Googleにおける宿泊および航空に関する検索行動の公開データ(Google Travel Trends)によると、全世界からの訪日旅行に関する需要指数は、7~8月のみ東京五輪の影響で一時的に指数が回復したものの、それ以外の月はおおむねコロナ禍前の2019年から7割減で推移した。一方で、全世界間の国際旅行に関する需要指数は徐々に回復傾向にあり、10~11月はコロナ禍前と同水準にまで回復した。しかしながら、オミクロン株の影響により12月は再び下落した。
これを主要地域別に比較すると、米国やフランスは、他国と比べると需要指数の回復が顕著であった。欧米では入国制限が緩和されたことで、国際旅行の機運が高まっていたことが分かる。一方で、シンガポールなどアジア諸国は2020年に引き続き低水準に留まった。欧米と比べると水際対策が厳しく、国際旅行の潜在需要は比較的少ないと考えられる。

参考)新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言等の期間(京都・東京)

2022年の見通し

2021年は2020年に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響で観光産業が大きな打撃を受けた。変異株の拡大により、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が度々適用されつつも、秋以降はワクチン接種率の上昇に伴い、旅行需要が一時的に回復した。
国内では、オミクロン株の感染者数が減少傾向となり、2022年の年明けから続いていたまん延防止等重点措置が3月21日に全面解除された。早速、府民限定の宿泊キャンペーンが再開され、今後は近隣県民への適用拡大、全国的なGoToキャンペーンの再開も検討されている。2020年のGoToトラベルキャンペーン以降のリベンジ消費も期待される。
世界的には入国制限の緩和が進んでおり、日本でもビジネス目的や留学生の入国が再開された。今後、新たな脅威となる変異株が拡大しない限りは、入国制限の緩和と観光業における回復基調は続くとみられ、訪日外国人客の受け入れ再開に備える必要がある。とはいえ、ウクライナにおける紛争に起因した原油の高騰に伴い、航空輸送の燃油サーチャージの上昇が予想されるなど、当面は不安定な市場環境が続くと考えられる。引き続き、市場環境の把握に役立つデータの収集に努め、市内観光事業者の経営支援に繋げたい。

出所)京都HP、東京都HP、GoToトラベルキャンペーンHP等を参考に京都市観光協会で作成

調査対象

京都市内における日本人および外国人の宿泊状況等をタイムリーに把握できるよう、平成26年(2014年)4月以降、京都市内の主なホテルの協力を得て、国・地域別の調査を毎月実施。なお、本調査では、ビジネス、観光を問わず、日本国籍以外のパスポートを有する人すべてを「外国人」として定義している。

 20日間以上
休業
10~19日間
休業
1~9日間
休業
休業なし調査対象
施設
客室数
2014年度末257,619
2015年度末287,837
2016年度末349,083
2017年度末379,182
2018年度末5411,637
2019年度末5912,796
2020年1月000585812,647
2020年2月000595912,519
2020年3月000595912,796
2020年4月1382335712,389
2020年5月3111225511,823
2020年6月1832365912,342
2020年7月600556112,776
2020年8月510576313,208
2020年9月600586414,921
2020年10月300626513,685
2020年11月300636614,381
2020年12月400646814,081
2021年1月51656 68 13,837
2021年2月1020566813,762
2021年3月41274 81 15,330
2021年4月41188 94 16,997
2021年5月101183 95 16,762
2021年6月91187 98 17,613
2021年7月31293 99 17,897
2021年8月31195 100 17,771
2021年9月40096 100 17,593
2021年10月300100 103 18,120
2021年11月310101 105 18,280
2021年12月400100 104 18,257

※前年と本年では対象施設数・客室数が異なり、毎月の調査では当月だけでなく前年同月の数値もいただいているため、今回発表する前年の数値は昨年発表した数値と異なる場合がある。

 新型コロナウイルス感染症の拡大等に伴う臨時的な休業の扱いについて

調査対象期間、対象ホテルが臨時的に休業した場合は、通常営業していた期間のみを対象にして客室稼働率を算出する。

例)100部屋を有するホテルが、以下のように営業をしていた場合
➀ 1月1日~10日期間(10日)は100室のまま通常営業し、利用のあった客室数は200室
➁ 1月11日~20日期間(10日)は50室に絞って営業し、利用のあった客室数は100室
➂ 1月21日~31日の期間(11日)は休業

販売可能客室数: 100室×10日(➀期間)+ 50室×10日(➁期間) = 1,500室
客室稼働率 :利用のあった客室数300室 ÷ 営業期間中の販売可能客室数1,500室 = 20%”用語の定義

延べ宿泊客数宿泊した人の宿泊数の合計

例)Aさん1泊、Bさん3泊の場合、Aさん1泊+Bさん3泊=4人(泊)

実宿泊客数宿泊施設に宿泊した人の人数

例)Aさん1泊、Bさん3泊の場合、Aさん1人+Bさん1人=2人

販売可能客室数日々販売されている客室数の月間累積値を示す。

例)100部屋を有するホテルにて、20室が改装工事中、80室を30日間販売していた場合、販売可能客室数:80室×30日=2,400室

稼働客室数宿泊客が実際に利用した客室数
客室稼働率(OCC)「販売可能客室数」における「稼働客室数」の割合
平均客室単価(ADR)稼働した全ての客室の販売価格の平均値。P16の客室収益指数(RevPAR)等の数値は、ホテルデータサービス会社STR(本社:イギリス・ロンドン)からの提供によるもので、上記の施設とは対象が一部異なる。
客室収益指数
(RevPAR)
客室稼働率に平均客室単価を乗じた値であり、宿泊施設の経営指標として重視されている。
外国人比率「総延べ人数」における「外国人延べ人数」の割合
前年比「当年の数値」を「前年の数値」で割り、1を差し引いた値
構成比「外国人延べ人数」における「各国・地域の延べ人数」の割合

参照した外部データ

観光庁「宿泊旅行統計」

  • 京都市全体の宿泊客数(標本調査に基づく拡大推計)
  • 日本全体の宿泊客数(標本調査に基づく拡大推計)

日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」

  • 日本全体における国・地域別の入国者数

STR「ホテル産業データ」

  • 国内外主要都市の客室稼働率、平均客室単価

KDDI Location Analyzer

  • スマートフォンの位置情報をもとにした、来訪者の年代別の内訳

Google Travel Trends

  • Google上での宿泊・航空に関する検索行動に関する指標

京都市保健福祉局「営業許可施設数」

  • 市内宿泊施設の件数および客室数

OAGフライトデータ

  • 国際便定期路線座席数の前年比

三菱UFJリサーチ&コンサルティング「外国為替相場」

  • 主要通貨の為替相場の月別推移

その他

本資料の数値を引用する場合は、「出典:京都市観光協会データ年報(2021)」を明示してください。

ただし、P18のSTRデータについては、STRの書面による許諾を伴わない再出版もしくは二次使用は固く禁じられています。なお、報道・メディア媒体への掲載については、(公社)京都市観光協会(担当:堀江)までお問合せください。

なお、調査対象施設の個別の名称やデータは、各施設の経営に関わる機密事項のため、非公開としております。
あらかじめご了承ください。

京都観光総合調査との関連について

京都市全体の観光動向の把握については、ほぼすべての市内宿泊施設(旅館業法許可施設)を対象とする「京都観光総合調査」(京都市から年1回発表)が基本指標となる。当調査は、インバウンドマーケットの傾向を把握するための、京都市内の主なホテルを対象とするサンプル調査であるため、その他ホテルや旅館、簡易宿所、いわゆる「民泊」等に宿泊した外国人客は含まれておらず、訪日外客数(日本全体)との比較等も参考分析という位置づけとなる。

調査レポートのダウンロード/分析ダッシュボード

調査レポートの詳細な分析結果(PDF)のダウンロード、また各種データを自由に加工・分析していただける
分析ダッシュボードについては、以下からそれぞれお申込みください。

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公益社団法人 京都市観光協会 マーケティング課 神田・堀江

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