全体概要
京都市内における日本人および外国人の宿泊状況等をタイムリーに把握できるよう、平成26年(2014年)4月以降、京都市内の主なホテルの協力を得て、国・地域別の調査を毎月実施。なお、本調査では、ビジネス、観光を問わず、日本国籍以外のパスポートを有する人すべてを「外国人」として定義している。
61.2%
71.9pts
京都市内主要ホテルにおける2020年の延べ宿泊客数は、前年比61.2%減となり、2014年の調査開始以来初めての減少となった。新型コロナウイルス感染症の影響で外国人宿泊客数が長期間にわたってほぼゼロの状態が続いたことで同89.0%減と大きく下落し、日本人宿泊客数も同32.5%減となったことで、京都市内の宿泊施設の経営は非常に厳しい1年となった。
ただし、11月にはGoToトラベルキャンペーン等の後押しを受けて日本人宿泊客が前年同月比42.8%増と一時的に回復したため、日本人の潜在的な旅行需要は2019年以前より高まっている状況だと考えられる。
35.8%
45.4pts
2020年の客室稼働率は35.8%となり、前年から45.4ポイントの大幅下落となった。前年からの下落は2017年から4年連続である。2019年以前は全国平均よりも高い稼働率で推移してきたが、2020年は全国平均と同じ水準にまで下がったことから、他地域よりも京都の宿泊施設が受けた影響は大きいといえる。
11月には63.2%にまで回復したものの、例年この時期は紅葉を目当てにした観光客で賑わうことから、前年同月比は25.0ポイント減と依然として大きな開きがあり、宿泊施設が安定した経営を続けるためには、より一層の稼働が必要となる。
14.4%
34.5pts
2020年の外国人比率は14.4%となり、調査開始以来最低となったものの、全国平均の5.9%を大きく上回る水準となった。例年、中華系の観光客が多くなる1~2月にかけての春節の時期は、新型コロナウイルス感染症の影響が本格化する前であったため、外国人宿泊客数の内訳は前年に続き中国が35.2%と最も多かった。逆に欧米からの宿泊客の割合が減少したが、オーストラリアからの宿泊客は例年1月に増えることから、相対的に増える結果となった。
1.65日
0.16日
日本人の平均宿泊日数は1.65日となり、前年の1.49日から大きく伸びた。在宅勤務の普及に伴うワーケーション目的などでの長期滞在利用が増えたことが影響したのではないかと考えられる。一方で、滞在期間が長い欧米諸国からの宿泊客の構成比が減ったことで、外国人の平均宿泊日数は前年の2.30日から2.07日へ縮んでおり、日本人とは対照的な推移となった。
12,580円
22.2%
調査対象施設における2020年の平均客室単価は1月以外の全ての月で前年を下回り、前年比22.2%減の12,580円となった。とくに、例年は桜を目当てにした観光需要に応じて4月に価格が高騰するが、2020年は渡航規制や緊急事態宣言の影響でほとんど価格に変化が見られなかった。11月はGoToトラベルキャンペーンの後押しもあり、前年同月との差が一桁に収まるまで価格が回復した。客室稼働率と平均客室単価を乗じて算出する客室収益指数も、前年から66.1%減の4,517円と大きく落ち込んだ。
京都市観光協会が提携するSTRの調査結果によると、国内主要都市は海外と比べて平均客室単価の減少が比較的小幅に収まっているが、客室稼働率が大きく低下したため、客室収益指数の差はほとんど無かった。
-89.5%
スマートフォンの位置情報に基づくビッグデータによると、京都駅周辺における滞在人口は、緊急事態宣言が発令される前の2月末頃から減少し、4月末には前年同週比89.5%減と最低値を記録した。6~7月頃は、テレワークの普及などで早朝や夜間の通勤が減る一方で、昼間の人出が比較的回復し、前年同期比40%減前後となった。GoToトラベルキャンペーンが開始されてからは、駅周辺宿泊施設を利用する観光客が増えたためか深夜から早朝にかけての時間帯の回復が進んだ。一方で、感染の再拡大に伴って飲食店の時短営業要請が行われたことで夜間の人出の回復が遅れている。
若年層や、近隣地域からの来客の回復が比較的早い時期から始まっており、新型コロナウイルス感染症の影響を受けにくい市場だと言える。東京都からの観光客は一時期ほぼゼロになるまで減少したが、その頃から比較すると11月は約30倍にまで急増しており、人口の多い首都圏の動向が京都の観光に与える影響は極めて大きいと言える。
日本人の京都訪問意向を表す「行こう指数」は、4月に38.8と最低値を記録したが、10月には155.8まで上昇し、11月の宿泊客数急増につながった。「行こう指数」は宿泊客数の水準を上回る状況が続いているため、2020年は京都へ行きたくても行けない状況の人が多かったと考えられる。
市内の宿泊施設数は、518軒の新規開業があった一方で、580軒が廃業となり、合計数は減少した。前年から施設数が減少するのは、2015年以降初めてのことである。京都商工会議所の「経営経済動向調査」によると、旅館・ホテル業は2020年上半期に各指標が大きく悪化したが、下半期はGoToトラベルキャンペーンなどの影響で改善が進んだ。料理・飲食業は、2020年7~9月期に一時的に上向いたものの、それ以降は夜間営業の自粛などの影響を受けて悲観的な見方が続いており、厳しい状況である。
2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響で観光産業が大きな打撃を受ける1年となった。2021年の年明け早々に緊急事態宣言が発令されたことで、引き続き厳しい状況が続いている。京都市観光協会データ月報12月号(2021年1月28日発表)でも記載したとおり、GoToトラベルキャンペーンの再開などの後押しが無いままだと、2021年3月までの市内主要ホテルにおける客室稼働率は、昨年夏頃の水準にまで戻ってしまう予測となっている。
かたや昨年の秋は、GoToトラベルキャンペーン等の支援もあって、外国人観光客が不在のあいだに京都を訪れようとする日本人の京都観光に対する潜在需要の高さが垣間見えた1年でもあった。2021年4月以降、高齢者から先行してワクチンの接種開始が予定されており、こうした動きに伴ってGoToトラベルキャンペーンも再開されると、また需要が急回復すると期待している事業者も多い。
とはいえ当面は不安定な市場環境が続くと考えられるため、衛生対策を徹底しつつ、近隣地域や若年層など比較的需要が安定している市場からの集客にも取り組む姿勢が求められる。引き続き、市場環境の把握に役立つデータの収集に努め、市内観光関連事業者の経営支援に繋げたい。
京都市内における日本人および外国人の宿泊状況等をタイムリーに把握できるよう、平成26年(2014年)4月以降、京都市内の主なホテルの協力を得て、国・地域別の調査を毎月実施。なお、本調査では、ビジネス、観光を問わず、日本国籍以外のパスポートを有する人すべてを「外国人」として定義している。
20日間以上休業 | 10~19日間休業 | 1~9日間休業 | 休業なし | 調査対象施設 | 客室数 | |
1月 | 0 | 0 | 0 | 58 | 58 | 12,647 |
2月 | 0 | 0 | 0 | 59 | 59 | 12,519 |
3月 | 0 | 0 | 0 | 59 | 59 | 12,796 |
4月 | 13 | 8 | 2 | 33 | 56 | 11,830 |
5月 | 31 | 1 | 1 | 22 | 55 | 11,823 |
6月 | 18 | 3 | 2 | 36 | 59 | 12,342 |
7月 | 6 | 0 | 0 | 55 | 61 | 12,776 |
8月 | 5 | 1 | 0 | 57 | 63 | 13,208 |
9月 | 6 | 0 | 0 | 58 | 64 | 14,921 |
10月 | 3 | 0 | 0 | 62 | 65 | 13,685 |
11月 | 3 | 0 | 0 | 63 | 66 | 14,381 |
12月 | 4 | 0 | 0 | 64 | 68 | 14,081 |
※京都市内ホテルの客室数ベースで約4割をカバー(京都市観光協会調べ)
※前年と本年では対象施設数・客室数が異なり、毎月の調査では当月だけでなく前年同月の数値もいただいているため、今回発表する前年の数値は昨年発表した数値と異なる場合がある。
※P17の客室収益指数(RevPAR)等の数値は、ホテルデータサービス会社STR(本社:イギリス・ロンドン)からの提供によるもので、上記の施設とは対象が一部異なる。
調査対象期間、対象ホテルが臨時的に休業した場合は、通常営業していた期間のみを対象にして客室稼働率を算出する。
例)100部屋を有するホテルが、以下のように営業をしていた場合
➀ 1日~10日期間(10日)は100室のまま通常営業し、利用のあった客室数は200室
➁ 11日~20日期間(10日)は50室に絞って営業し、利用のあった客室数は100室
➂ 21日~31日の期間(11日)は休業
販売可能客室数: 100室×10日(➀期間)+ 50室×10日(➁期間) = 1,500室
客室稼働率 :利用のあった客室数300室 ÷ 営業期間中の販売可能客室数1,500室 = 20%
延べ宿泊客数 | 宿泊した人の宿泊数の合計
例)Aさん1泊、Bさん3泊の場合、Aさん1泊+Bさん3泊=4人(泊) |
実宿泊客数 | 宿泊施設に宿泊した人の人数
例)Aさん1泊、Bさん3泊の場合、Aさん1人+Bさん1人=2人 |
販売可能客室数 | 日々販売されている客室数の月間累積値を示す。
例)100部屋を有するホテルにて、20室が改装工事中、80室を30日間販売していた場合、販売可能客室数:80室×30日=2,400室 |
稼働客室数 | 宿泊客が実際に利用した客室数 |
客室稼働率 | 「販売可能客室数」における「稼働客室数」の割合 |
客室収益指数 | 客室稼働率に平均客室単価を乗じた値であり、宿泊施設の経営指標として重視されている。 |
外国人比率 | 「総延べ人数」における「外国人延べ人数」の割合 |
前年比 | 「当年の数値」を「前年の数値」で割り、1を差し引いた値 |
構成比 | 「外国人延べ人数」における「各国・地域の延べ人数」の割合 |
観光庁「宿泊旅行統計」
日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」
STR「ホテル産業データ」
内閣府「V-RESAS」におけるAgoop社の位置情報データ
KDDI Location Analyzer
Google Travel Trends
京都市保健福祉局「営業許可施設数」
京都商工会議所「経営経済動向調査」
OAGフライトデータ
三菱UFJリサーチ&コンサルティング「外国為替相場」
本資料の数値を引用する場合は、「出典:京都市観光協会データ年報(2020)」を明示してください。
ただし、P18のSTRデータについては、STRの書面による許諾を伴わない再出版もしくは二次使用は固く禁じられています。なお、報道・メディア媒体への掲載については、(公社)京都市観光協会(担当:堀江)までお問合せください。
なお、調査対象施設の個別の名称やデータは、各施設の経営に関わる機密事項のため、非公開としております。
あらかじめご了承ください。
京都市全体の観光動向の把握については、ほぼすべての市内宿泊施設(旅館業法許可施設)を対象とする「京都観光総合調査」(京都市から年1回発表)が基本指標となる。当調査は、インバウンドマーケットの傾向を把握するための、京都市内の主なホテルを対象とするサンプル調査であるため、その他ホテルや旅館、簡易宿所、いわゆる「民泊」等に宿泊した外国人客は含まれておらず、訪日外客数(日本全体)との比較等も参考分析という位置づけとなる。
調査レポートの詳細な分析結果(PDF)のダウンロード、また各種データを自由に加工・分析していただける
分析ダッシュボードについては、以下からそれぞれお申込みください。
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マーケティング課 堀江、水本、嵯峨