2022年10月の入国制限緩和以降、外国人観光客の需要が回復しつつある一方で、観光業界では、この数年間で多くの人材が離職し、少子高齢化も相まった人手不足の影響で、観光客へのサービス水準や、労働環境の維持が難しくなることが懸念されています。そこで京都市観光協会は、京都市の観光関連事業者の皆様を対象に、臨時調査として人手不足の状況についてのアンケートおよびヒアリングを行いましたので、その結果をお知らせします。今回の調査結果をもとに、今後の対策の検討を進めて参ります。
2022年10月の入国制限緩和以降、外国人観光客の需要が回復しつつある一方で、観光業界では、この数年間で多くの人材が離職し、少子高齢化も相まった人手不足の影響で、観光客へのサービス水準や、労働環境の維持が難しくなることが懸念されています。そこで京都市観光協会は、京都市の観光関連事業者の皆様を対象に、臨時調査として人手不足の状況についてのアンケートおよびヒアリングを行いましたので、その結果をお知らせします。今回の調査結果をもとに、今後の対策の検討を進めて参ります。
調査時期 | 2023年(令和5年)6月 |
調査対象 | 京都市内の観光関連事業者 |
調査方法 | 京都市観光協会の定時総会(6月14日開催)における調査票の配布および、京都市観光協会が配信するニュースレター購読者向けのWEBアンケート |
標本数 | 152件(2023年7月25日現在) |
主な調査項目 | 業種、従業員数、人手不足の職種、人手不足の要因、人手不足解消のための取組 |
調査時期 | 2023年(令和5年)6月 |
調査対象 | 京都市内の観光関連事業者(経営者もしくは経営を把握している方) |
調査方法 | 対面による聞き取り |
標本数 | 13事業者(宿泊施設、飲食、交通、土産品、文化・観光施設など) |
主な調査項目 | 今年の経営状況、人手不足への対応、働きやすさ向上の取組、生産性向上・デジタル化に向けた取組、リピーター対策について、京都観光モラルの取組、京都観光について |
コロナ禍前(2019年当時)からの従業員数の変動について尋ねたところ(問1)、従業員数がコロナ禍前比(2019年比)を下回ったと回答した事業者が占める割合は65.1%と、半数を超えた。特に、「宿泊」や「飲食」業界においては、コロナ禍前よりも従業員が2割以上減ったと回答した事業者が4割程度を占めており、他業種よりも多かった。
人手不足を感じているかどうかについて尋ねたところ(問5)、「とても感じる」または「感じる」と回答した事業者は71.3%であった。不足している職種や技能を尋ねたところ(問6)「接客」が46.0%で最も高く、次いで「営業・渉外」(34.0%)、「調理」(22.7%)であった。
人手が不足する要因について尋ねたところ(問7)、「就職希望者が少ない」と回答した事業者が70.0%、「離職者が多い」が42.7%であった。一部の事業者に対するヒアリングによると、2025年の大阪・関西万博の影響で大阪に人手が集中し、京都での人手不足がさらに深刻になるのではないかと予想する声もあった。
就職希望者が少ない要因について尋ねたところ(問8)、「賃金を上げる経営的な余裕がないから」と回答した事業者が占める割合が40.0%と最も多かった。離職者が多い要因について尋ねたところ(問9)、「長時間労働や、休日出勤、夜勤等」が30.7%と最も多かった。人手不足解消のためにすでに取り組んでいることについて尋ねたところ(問10)、「賃金水準の向上」と回答した事業者が52.0%と最も高かった。また、これから取り組みたいこと(問11)も、「賃金水準の向上」と回答した事業者が、32.7%と最も多かった。経営者側の視点では、人手不足を解消するうえで、賃金水準を改善することの優先度が高くなっていると考えられる。
一方で、ヒアリングによると、「賃金水準の向上」について取り組んでいるにも関わらず、就職希望者が集まらず苦労しているという声が多く聞かれた。他業界でも賃上げが相次いでおり、業界間での競争が激しくなっていると考えられる。
限られた労働力のなかで経営を維持するために、部署の垣根を越えた連携や、職員のマルチタスク化に取り組んでいると回答する事業者が複数みられた。また、多様な働き方ができるパートタイム労働の導入や、派遣社員の活用、クラウドソーシングサービスを活用した業務委託を効果的に組み合わせることで、労働力を確保している事例もあった。
ヒアリングによると、敢えて客室稼働率の目標値を制限し、客室単価の向上を目指していると回答する宿泊事業者があった。また、体験サービスを提供する事業者においても、1回の受け入れ人数を制限し、接客対応する従業員を減らしたことでサービスの質が向上し、客単価がコロナ禍前(2019年当時)の約4.5倍に上がったという事例があった。このように、受入れ客数を制限することで、従業員がサービス改善について考える余裕や、休暇を取得しやすい環境ができ、生産性の向上に繋がる場合があることが確認できた。
飲食店において、券売機の導入によって、接客サービスを手厚くすることができているだけでなく、会計業務でのミスや業務の引継ぎ時間が減り、従業員のストレスを減らすことにつながっている例もあった。飲食店に限らず、バックオフィス業務等のデジタル化を進めている例は多様な業種でみられた。
また、業界問わず若手社員の早期退職が多いとの意見があった。この対策として、若手社員中心のプロジェクトの立ち上げや、社員であれば誰でもアクセスが可能な情報共有システムの導入、研修制度の充実等を行っている例があった。一部の事業者では、若い人材を新たに獲得するために学生インターンシップの受け入れを行っている例もあった。
2019年当時の職員数を100としたとき | 従業員が 大幅に減った |
従業員が やや減った |
従業員が 減らなかった |
不明・回答なし | 全体 |
回答者実数 | 34.2% | 30.9% | 33.6% | 1.3% | 100.0% |
※2019年の従業員数を100としたとき、80未満の場合「従業員が大幅に減った」、
80以上100未満の場合「従業員がやや減った」、100以上の場合「従業員が減らなかった」として集計した。
表頭の項目は、問1の回答結果を意味する
従業員数 | 従業員が 大幅に減った |
従業員が やや減った |
従業員が 減らなかった |
全体 |
20人未満 | 34.6% | 14.9% | 47.1% | 32.7% |
20人以上100人未満 | 44.2% | 34.0% | 35.3% | 38.0% |
100人以上 | 21.2% | 51.1% | 13.7% | 28.0% |
不明 | 0.0% | 0.0% | 2.0% | 0.7% |
計 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
表頭の項目は、問1の回答結果を意味する
業種 | 従業員が 大幅に減った |
従業員が やや減った |
従業員が 減らなかった |
全体 |
宿泊 | 42.3% | 21.3% | 17.6% | 27.3% |
飲食 | 36.5% | 29.8% | 13.7% | 26.7% |
交通 | 9.6% | 25.5% | 3.9% | 12.7% |
小売 | 5.8% | 10.6% | 9.8% | 8.7% |
製造 | 11.5% | 8.5% | 17.6% | 12.7% |
文化芸能 | 5.8% | 6.4% | 3.9% | 5.3% |
社寺・文化財 | 0.0% | 8.5% | 7.8% | 5.3% |
集客施設 | 7.7% | 6.4% | 9.8% | 8.0% |
旅行会社 | 9.6% | 6.4% | 2.0% | 6.0% |
ガイド | 0.0% | 4.3% | 0.0% | 1.3% |
出版・印刷・広告 | 5.8% | 6.4% | 5.9% | 6.0% |
ICT | 0.0% | 4.3% | 5.9% | 3.3% |
金融 | 0.0% | 0.0% | 9.8% | 3.3% |
広告 | 3.8% | 0.0% | 2.0% | 2.0% |
公的団体 | 1.9% | 4.3% | 7.8% | 4.7% |
その他 | 1.9% | 2.1% | 3.9% | 2.7% |
表頭の項目は、問1の回答結果を意味する
現在、貴社において、 人手不足を感じていますか? |
従業員が 大幅に減った |
従業員が やや減った |
従業員が 減らなかった |
全体 |
とても感じる | 63.5% | 34.0% | 15.7% | 38.0% |
感じる | 19.2% | 55.3% | 27.5% | 33.3% |
どちらともいえない | 11.5% | 8.5% | 29.4% | 16.7% |
感じない | 5.8% | 0.0% | 15.7% | 7.3% |
まったく感じない | 0.0% | 2.1% | 9.8% | 4.0% |
不明・回答なし | 0.0% | 0.0% | 2.0% | 0.7% |
計 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
業種 | とても感じる | 感じる | どちらともいえない | 感じない | まったく感じない | 計 |
宿泊 | 51.2% | 39.0% | 4.9% | 2.4% | 2.4% | 100.0% |
飲食 | 39.0% | 43.9% | 12.2% | 4.9% | 0.0% | 100.0% |
交通 | 52.6% | 42.1% | 5.3% | 0.0% | 0.0% | 100.0% |
小売 | 21.4% | 50.0% | 14.3% | 14.3% | 0.0% | 100.0% |
製造 | 33.3% | 33.3% | 23.8% | 9.5% | 0.0% | 100.0% |
文化芸能 | 50.0% | 37.5% | 0.0% | 12.5% | 0.0% | 100.0% |
社寺・文化財 | 0.0% | 50.0% | 12.5% | 25.0% | 12.5% | 100.0% |
集客施設 | 25.0% | 50.0% | 8.3% | 16.7% | 0.0% | 100.0% |
旅行会社 | 77.8% | 11.1% | 11.1% | 0.0% | 0.0% | 100.0% |
ガイド | 50.0% | 50.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 100.0% |
出版・印刷・広告 | 22.2% | 44.4% | 22.2% | 0.0% | 11.1% | 100.0% |
ICT | 40.0% | 20.0% | 40.0% | 0.0% | 0.0% | 100.0% |
金融 | 0.0% | 0.0% | 60.0% | 20.0% | 20.0% | 100.0% |
広告 | 33.3% | 33.3% | 33.3% | 0.0% | 0.0% | 100.0% |
公的団体 | 0.0% | 42.9% | 42.9% | 14.3% | 0.0% | 100.0% |
その他 | 25.0% | 0.0% | 50.0% | 0.0% | 25.0% | 100.0% |
表頭の項目は、問1の回答結果を意味する
不足している 職種や技能 |
従業員が 大幅に減った |
従業員が やや減った |
従業員が 減らなかった |
全体 |
事務 | 21.2% | 23.4% | 21.6% | 22.0% |
企画 | 9.6% | 14.9% | 17.6% | 14.0% |
広報 | 9.6% | 10.6% | 15.7% | 12.0% |
経理 | 7.7% | 4.3% | 5.9% | 6.0% |
労務 | 7.7% | 8.5% | 5.9% | 7.3% |
法務 | 3.8% | 6.4% | 2.0% | 4.0% |
営業・渉外 | 32.7% | 42.6% | 27.5% | 34.0% |
販売 | 15.4% | 27.7% | 9.8% | 17.3% |
接客 | 69.2% | 53.2% | 15.7% | 46.0% |
調理 | 38.5% | 17.0% | 11.8% | 22.7% |
運転 | 9.6% | 17.0% | 5.9% | 10.7% |
清掃 | 26.9% | 12.8% | 5.9% | 15.3% |
施工 | 3.8% | 6.4% | 0.0% | 3.3% |
通訳・翻訳 | 3.8% | 4.3% | 7.8% | 5.3% |
エンジニア | 3.8% | 8.5% | 11.8% | 8.0% |
デザイン | 1.9% | 2.1% | 3.9% | 2.7% |
管理職 | 5.8% | 2.1% | 9.8% | 6.0% |
その他 | 0.0% | 6.4% | 2.0% | 2.7% |
表頭の項目は、問1の回答結果を意味する
人手が 不足する要因 |
従業員が 大幅に減った |
従業員が やや減った |
従業員が 減らなかった |
全体 |
就職希望者が少ない | 75.0% | 74.5% | 60.8% | 70.0% |
離職者が多い | 55.8% | 59.6% | 13.7% | 42.7% |
表頭の項目は、問1の回答結果を意味する
就職希望者が 少ない要因 |
従業員が 大幅に減った |
従業員が やや減った |
従業員が 減らなかった |
全体 |
業務内容の魅力が乏しいから | 40.4% | 17.0% | 15.7% | 24.7% |
勤務時間などの制約があるから | 46.2% | 36.2% | 19.6% | 34.0% |
求める能力が高いから | 7.7% | 14.9% | 21.6% | 14.7% |
賃金を上げる経営的な余裕がないから | 44.2% | 48.9% | 27.5% | 40.0% |
その他 | 1.9% | 4.3% | 2.0% | 2.7% |
表頭の項目は、問1の回答結果を意味する
離職者が 多い要因 |
従業員が 大幅に減った |
従業員が やや減った |
従業員が 減らなかった |
全体 |
業務内容の魅力が乏しいから | 17.3% | 10.6% | 3.9% | 10.7% |
長時間労働や、休日出勤、夜勤等 | 46.2% | 34.0% | 11.8% | 30.7% |
賃金を上げる経営的な余裕がないから | 34.6% | 36.2% | 9.8% | 26.7% |
将来のキャリアパスを描けないから | 36.5% | 29.8% | 13.7% | 26.7% |
職場の人間関係 | 30.8% | 10.6% | 3.9% | 15.3% |
その他 | 0.0% | 8.5% | 0.0% | 2.7% |
表頭の項目は、問1の回答結果を意味する
既に 取り組んでいること |
従業員が 大幅に減った |
従業員が やや減った |
従業員が 減らなかった |
全体 |
賃金水準の向上 | 51.9% | 66.0% | 39.2% | 52.0% |
勤務条件の緩和(時短、在宅勤務など) | 32.7% | 44.7% | 35.3% | 37.3% |
研修・福利厚生の充実 | 26.9% | 42.6% | 21.6% | 30.0% |
ICTの導入などの業務効率化 | 21.2% | 25.5% | 13.7% | 20.0% |
求人広告の強化 | 28.8% | 25.5% | 15.7% | 23.3% |
企業イメージの改善 | 19.2% | 23.4% | 13.7% | 18.7% |
外国人労働者の受入環境整備 | 23.1% | 14.9% | 17.6% | 18.7% |
インターンシップの受入 | 30.8% | 29.8% | 17.6% | 26.0% |
定年延長 | 15.4% | 25.5% | 9.8% | 16.7% |
その他 | 0.0% | 4.3% | 2.0% | 2.0% |
表頭の項目は、問1の回答結果を意味する
これから 取り組みたいこと |
従業員が 大幅に減った |
従業員が やや減った |
従業員が 減らなかった |
全体 |
賃金水準の向上 | 40.4% | 34.0% | 23.5% | 32.7% |
勤務条件の緩和(時短、在宅勤務など) | 28.8% | 12.8% | 7.8% | 16.7% |
研修・福利厚生の充実 | 23.1% | 19.1% | 5.9% | 16.0% |
ICTの導入などの業務効率化 | 25.0% | 23.4% | 19.6% | 22.7% |
求人広告の強化 | 19.2% | 19.1% | 9.8% | 16.0% |
企業イメージの改善 | 26.9% | 6.4% | 15.7% | 16.7% |
外国人労働者の受入環境整備 | 30.8% | 12.8% | 15.7% | 20.0% |
インターンシップの受入 | 17.3% | 12.8% | 11.8% | 14.0% |
定年延長 | 15.4% | 12.8% | 9.8% | 12.7% |
その他 | 0.0% | 2.1% | 0.0% | 0.7% |
地域との調和に関する取組
質の高いサービスに関する取組
環境や景観の保全に関する取組
防災や危機管理に関する取組
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平田・福永・堀江