京都観光意向指数(通称:行こう指数)の開発について

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2021. 01. 20
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データ月報

このたび、公益社団法人 京都市観光協会(DMO KYOTO)は、観光客の現在の京都への訪問意向を定量的に把握することを目的に、京都観光意向指数(通称:行こう指数)を開発しましたのでお知らせいたします。

これまで、観光客の入洛状況に関する指標は、京都市観光協会データ月報として発表している市内主要ホテル統計をはじめ、訪問実績にまつわるものがほとんどでした。そこで当協会では、訪問前の意向を多角的に考慮し、定量的に捉えることができる指標として、日本人の京都観光に関するインターネット上の情報の閲覧者数を分野ごとに指数化して統合した「行こう指数」を開発しました。今後この指数にて、刻々と変化する観光客の訪問意向の推移をお届けすることは、京都の観光事業者にとっても、市場の動向把握や、事業計画の助けになるものと考えています。

今後、指数の精度改善を重ねながら、毎月の値を京都市観光協会データ月報内でお知らせして参ります。また、将来的には、需要予測への活用や、外国人観光客版への拡張を検討して参ります。

1. 算出方法

行こう指数は、京都観光の訪問意向を反映していると考えられる5つの分野に関する指数を、過去の調査などを踏まえて独自の基準で重み付けをして合成して算出している。各指数の基準は、新型コロナウイルス感染症や台風などの災害の影響が比較的少なかった2019年の平均値とし、指数が100を超えると2019年当時よりも訪問意向が高まっていることを表す。各指数の算出方法は以下のとおり。

行こう指数 日本人による、京都旅行や観光に関するサイトへのアクセスなど元にした京都旅行や観光への意向を示す指数で、2019年の平均値を基準とし、以下の各指数へ重み付けを行って合成した値。各種サイトへのアクセス数は、京都府内からのアクセスを除いた閲覧(スマートフォンからの閲覧は除く)を対象とし、消費者ネット行動ログデータを保有する株式会社ヴァリューズ(所在地:東京都・港区)による推計値を利用している。
京都観光情報サイト指数 京都市公式サイト「京都観光Navi」(https://ja.kyoto.travel/)など京都観光、京都旅行に関する検索後の京都観光情報サイトのうち、閲覧数上位のサイトのアクセス数(月次のユニークユーザー数)を2019年の平均値を基準として指数化したもの。
京都観光施設公式サイト指数 京都市内の主要な観光施設サイトのうち、閲覧数上位のサイトのアクセス数(月次のユニークユーザー数)を2019年の平均値を基準として指数化したもの。
京都グルメサイト指数 京都のディナーやグルメに関する検索後のグルメサイトのうち、閲覧数上位のサイトのアクセス数(月次のユニークユーザー数)を2019年の平均値を基準として指数化したもの。
京都宿泊予約サイト指数 京都の宿泊に関する検索後の宿泊予約サイトのうち、閲覧数上位のサイトのアクセス数(月次のユニークユーザー数)を2019年の平均値を基準として指数化したもの。
京都旅行ツイート数指数 SNS上での投稿内容を分析するサービス(ソーシャルリスニングツール)を活用して取得した、京都旅行の意向を含むツイート数を、2019年の平均値を基準として指数化したもの。京都旅行の意向は、「京都」または京都の主要な観光施設の名称を含み、かつ、「行きたい」「観光したい」などの旅行の意向を含むツイートとして集計。

指数の算出方法のイメージ

2. 集計結果を踏まえた2020年の動向分析

京都観光への訪問意向は4月に最低となり、前年の約4割の水準にまで落ち込む

  • 2020年の毎月の「行こう指数」は、3月まで前年並で推移していたが、緊急事態宣言が発令された4月に38.8と激減し、今年の最低値となった。
  • 7月頃までは、市内主要ホテルにおける実宿泊客数の指数との乖離が大きく、訪問意向の強さに対して、実際には訪問できない状況が数カ月にわたって続いたと考えられる。

9月からは訪問意向が前年を上回る水準に回復し、10月には5割増を超える勢いを記録

  • 緊急事態宣言が解除されたあと、「行こう指数」は徐々に回復し、9月には前年を上回る水準となった。10月には155.8と、前年平均の5割増と極めて高い値を記録した。11月の秋の紅葉への関心が高まったことや、GoToトラベルキャンペーンの対象に東京発着の旅行が加わったことで旅行人口が増えたことが、指数に現れたと考えられる。
  • 11月の紅葉時期に対する訪問意向の高まりが、10月時点で現れているように見受けられることから、紅葉時期は早めに情報収集を始める人が多いと考えられる。とくに、10月の宿泊予約サイト指数は200を超えており、GoToトラベルキャンペーンが適用される宿泊プランを検索する人が急増したと考えられる。

12月は感染再拡大の影響を受けて、宿泊客数も「行こう指数」も大きく落ち込む

  • 12月の実宿泊客数の指数は60.7、「行こう指数」は67.1と、それぞれ前月から大きく落ち込んだ。新型コロナウイルス感染症の再拡大を受けてGoToトラベルキャンペーンの見直しが行われた影響で、実需要だけでなく訪問意向までもが大幅に縮小したといえる。
  • 前月までは、宿泊客数と「行こう指数」とのあいだに10ポイント以上の乖離がある状態が続き、行きたくても行けない状況にある人が多かったと考えられる。その後、京都へ行くことを我慢していた人のうち一定数は秋の紅葉時期に京都を訪れることができたことから、12月はこれらの値の差が縮まったとも考えられる。1月から発令された緊急事態宣言によって、再び我慢が求められる状況が続くと想定し、「行こう指数」の動向を注視したい。

2020年の「行こう指数」と市内主要ホテルにおける日本人実宿泊客数

(参考)2019年の「行こう指数」と市内主要ホテルにおける日本人実宿泊客数

注)市内主要ホテルにおける日本人実宿泊客数は、京都市観光協会データ月報から引用しており、指数化の方法は他の指数と同様に、2019年の平均値を基準としている。

2020年の分野別指数

(参考)2019年の分野別指数

3. 専門家からのコメント(京都大学 若林靖永 教授)

  • インターネット上における旅マエの動向を把握することができる指標として、興味深いデータである。旅行関連メディアや報道機関などにとっては、自社の業績との比較対象として参考にすることができる。また、小売業や一部の飲食店など、予約を伴わない集客形態をとっている事業者にとっても、短期的な事業計画を検証・検討するにあたっての材料となるのではないか。
  • 分野別の指数の推移をみると、宿泊客数が増える前月時点で指数が高まる場合もあれば、そうでない場合もあるなど、相関が弱いものもある。これらの特性の分析を深め、各指数と宿泊客数との関係をより明らかにすることができれば、短期的な市場予測が可能となり、価格設定や在庫調整の判断材料にできるだろう。

4. 参考

株式会社ヴァリューズ「消費者ネット行動ログデータ」について

株式会社ヴァリューズは、モニター登録に同意した、国内250万人規模の行動ログモニター会員によるインターネットの閲覧行動ログデータをもとに、あらゆるWEBサイトへのアクセス状況を分析できるサービスを提供しています。閲覧者数や閲覧ページ数に加えて、性別・年代・エリアなどのユーザー属性情報も統計的に把握できるほか、モニター会員へのアンケート調査も実施することができます。

商号                  株式会社ヴァリューズ(英文社名:VALUES, Inc.)
本社所在地       〒107-0052 東京都港区赤坂2-19-4 FORUM赤坂5F
設立年月日       2009年9月30日
資本金              1億円
代表者              代表取締役社長 辻本 秀幸
事業内容           経営に関するコンサルティング及び成長支援事業、インターネット行動ログ分析事業 (ビッグデータ解析事業)、IT先端技術を駆使した“売れる仕組み”構築事業

若林靖永 教授プロフィール

京都大学経済学部、京都大学大学院経済学研究科修士課程、同博士後期課程退学。博士(経済学)。京都産業大学経営学部専任講師、京都大学経済学部助教授、京都大学大学院経済学研究科教授(現在に続く)を経て、現職。商品開発・管理学会会長、NPO法人教育のためのTOC日本支部理事長など。公益社団法人京都市観光協会のアドバイザーを務める。

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担当:堀江、小笠原

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