この記事は、2019年7月25日に広報発表した「京都観光総合調査等を活用した京都観光の最新動向詳細分析結果について」に関する内容を、4回に分けて解説する連載記事です。
第1稿:データから見る京都観光の現状と満足度の実態
第2稿:日本人リピーターの実態分析 ~京都ファンは混雑を避けてスマートに観光~
第3稿:訪日市場を牽引する京都のインバウンド動向 ~京都のライバルはどこ?~
第4稿:訪日リピーターによる地方周遊化への対応
京都観光にとっての主要市場は初訪日客ですが、ここ数年は再訪日客が増加しつつあるため、リピーター対策も無視できません。訪日リピーターは、北海道をはじめとした地方の観光地への周遊傾向が強くなります。また、仮に再び京都を訪れるとした場合のニーズは、「寺社など」よりも「桜や紅葉」「温泉」「祭」へと変わります。主要観光地だけでなく、京都市内外の様々な観光資源を組み合わせることでリピーターを確保し、需要の分散化を実現することが重要です。
この記事は、2019年7月25日に広報発表した「京都観光総合調査等を活用した京都観光の最新動向詳細分析結果について」に関する内容を、4回に分けて解説する連載記事です。
第1稿:データから見る京都観光の現状と満足度の実態
第2稿:日本人リピーターの実態分析 ~京都ファンは混雑を避けてスマートに観光~
第3稿:訪日市場を牽引する京都のインバウンド動向 ~京都のライバルはどこ?~
第4稿:訪日リピーターによる地方周遊化への対応
前回の記事で分析したとおり、京都にとって初訪日市場は重要です。しかし、訪日市場において初訪日客が占める割合は減少傾向が続いています。この主な要因は、アジアの訪日客のリピーター化が進んでいることにあるため、比較的アジア市場への依存率が低い京都にとっての影響は少ないかもしれません。
しかし、訪日観光が世界的に人気になればなるほどリピーターの絶対数は増えるため、いずれこの流れは欧米市場に支えられている京都にとっても無視できないものになる可能性は否定できません。したがって、リピーターの動向を把握しておくことも重要となってきます。
京都観光総合調査では、京都を訪れた外国人観光客が京都以外にどこを訪れているのかについて聞き取りを行っています。ここで、ゴールデンルート上の観光地(東京、箱根・富士、京都、奈良、大阪、神戸、広島と定義)以外も周遊した人の割合を、地方周遊化の指標として定義することとします。訪日外国人の訪問先は、出入国空港の位置によって左右されると考えられるため、分析にあたっては出入国空港の組み合わせが同じ回答者同士での比較を行いました。
その結果、リピーターのほうが地方周遊をする傾向にあることが分かりました。また、前年と比べても地方周遊が進んでおり、今後ますます地方周遊が進むと考えられます。
実際、訪日リピーターの割合が高い香港、台湾、韓国では、京都観光の比較対象として日本国内の他観光地を挙げる人が多く、様々な観光地に対して関心が向いていると考えられます。
次に、初入洛客と再入洛客の満足度構造を比較してみましょう。以下のグラフはこれまでのコラムでも何度か登場していますが、グラフの上に位置するほど満足度が高く、グラフの右に位置するほど全体の満足度に与える影響が強い項目であることを表しています。
この結果、再入洛客は「宿泊」や「物価」に対する満足度が全体の満足度に与える影響が強くなり、逆に「案内」や「標識」については影響が弱くなる傾向がありました。入洛経験が増えるにつれて、滞在中の生活に関わる要素が意識されるようになる一方で、慣れによって「案内」や「標識」の重要度は下がるものと考えられます。
また、京都観光総合調査では、「今回京都を訪れた動機」と「次回訪れるとしたら体験したいこと」を比較することで、再来訪してもらうための条件を分析することができます。
京都を訪れる動機としては、「寺院・神社、名所・旧跡」が85%、「伝統文化鑑賞」が52%と突出していますが、次回の来訪時の希望はそれぞれ半分程度減少しています。一方で、「祭り」や「温泉」に対する回答は、次回来訪時の回答率が大幅に上昇しており、再来訪する場合の重要な条件になっていることが分かります。
さらに、今回京都を訪れた際に他に訪問した場所と、次回訪日するとしたら訪れたい場所とを比較してみることもできます。今回の京都観光では、東京はもちろん、京都から近い大阪や奈良を訪問した人が多くなっています。一方で、次回訪日する際の希望としては、これらの地域の回答率が下がり、北海道の回答率が大幅に上昇しています。
なお、今回訪問地と次回訪問希望地のクロス集計を行うと、同じ場所への訪問希望率が著しく低いことも分かります。こうした訪日リピーターのニーズに対応するためには、前回の訪日旅行では体験できなかったコンテンツの訴求や、北海道のような地域が持つ魅力の創出、あるいはそうした地域との連携も、戦略の選択肢として有り得るのではないかと思います。
そのような傾向があるにも関わらず、京都市に何度も訪れる外国人が京都でどのような観光をしているのかは気になるところです。そこで、入洛経験別の市内訪問エリアを比較してみました。
以下の表によると、入洛経験が多い人ほど京都市内の周辺地域や京都市に隣接する地域への訪問率が高くなっていることが分かります。このことから、有名観光地の裏に隠れるスポットの魅力や周辺観光地の存在が、京都への複数回訪問に繋がっている可能性があるといえるでしょう。したがって、こうした周辺地域の魅力を活用したり連携を深めたりすることで、「何度でも楽しめる京都」のイメージを定着させていくことが、京都を持続可能な観光地にしていくうえで重要です。
図表データ
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プロフィール
京都市観光協会 マーケティング課 DMO企画・マーケティング専門官
1988年 京都市左京区出身。
京都大学大学院 農学研究科 修士課程修了。
2012年(株)三菱総合研究所 入社。
LCC(格安航空会社)就航に伴う経済効果分析、
東京都における観光戦略策定およびグローバルマーケティング調査、
鉄道各社のコンサルティング業務など、
観光分野を始めとした政策評価や調査業務に従事。
2016年7月から現職。
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マーケティング課 堀江