訪日外国人を対象とする消費税免税制度は、本年4月から電子化手続きが始まります。これを受け、京都市観光協会では、昨年12月4日、メルパルク京都において、「免税手続の電子化に関するセミナー」(第22回観光協会・ビューローインバウンドセミナー)を開催しました。定員を大きく上回る約150名の参加者が、電子化に関する最新動向や具体的な手続き方法を学び、また、電子化に対応した免税システムを提供する事業者のデスクには多くの免税店担当者が列を作り、関心の高さがうかがえました。
この記事は、2回に分けて配信する連載記事です。
Part1
・そもそも免税店とは? ~外国人が国外持出のために1店舗で1日5,000円以上購入すれば、消費税が免税に~
・京都ならではのきめ細かな免税店支援サービス
Part2
・京都市内の免税店数は5年間で9倍増
・免税売上は年間220億円に ~中小免税店も売り上げ増~
・新たな転機、免税手続の電子化とは?
・メイドイン京都の伝統産業品を今後も外国人観光客に ~免税店支援を通じた持続可能な観光振興~
訪日外国人を対象とする消費税免税制度は、本年4月から電子化手続きが始まります。これを受け、京都市観光協会では、昨年12月4日、メルパルク京都において、「免税手続の電子化に関するセミナー」(第22回観光協会・ビューローインバウンドセミナー)を開催しました。定員を大きく上回る約150名の参加者が、電子化に関する最新動向や具体的な手続き方法を学び、また、電子化に対応した免税システムを提供する事業者のデスクには多くの免税店担当者が列を作り、関心の高さがうかがえました。
日本における免税店とは、外国人観光客等の非居住者に対して特定の物品を一定の方法で販売する場合に、消費税を免除して販売できる店舗のことを指します。一定の条件がありますが、外国人観光客であれば消費税が免除されるお店のことで、消費税法第8条でいう「輸出物品販売場」が免税店の正式な名称です。
ちなみに、空港の免税店、いわゆる「Duty Free Shop」は、消費税に加え酒税及び関税も免除になりますが、空港内の保税地域での引渡しとなるなど、ここで説明する免税店とは形態が異なります。
免税店になるには、店舗ごとに税務署の許可が必要です。納税地を所轄する税務署に必要書類とともに許可申請書を提出し、許可が下りれば免税販売が可能となります(申請から許可まで 概ね数日から数週間)。
日本の免税制度は、外国人観光客の消費拡大を目的に、その対象が順次拡大されてきました。大きな転換期となったのは、消費税が5%から8%に増税となった2014年度。それまでは、カバン、時計、家電製品などの「一般物品」(合計10,000円超)のみが免税対象でしたが、薬、化粧品、食品などの「消耗品」(合計5,000円超)が追加対象となり、いわゆる「爆買い」ブームに拍車を掛けました。2016年度からは「一般物品」の購入限度額が10,000円超から5000円以上に引き下げられ、2017年度以降は、「一般物品」と「消耗品」の合算購入が可能となり、1店舗につき1日で1人5,000円以上購入すれば消費税が免税されるという、分かりやすい制度になっています。
ただし、日本国外での消費を前提に消費税が免税される仕組みですので、対象は輸出可能な物品に限られます。よって、飲食店での食事やテーマパーク入場料といった、国外に持ち出すことのできないものは免税対象とはなりません。また、薬や化粧品などの「消耗品」は、国内で消費されないよう、免税店での購入時に透明の袋等でラッピングされます。なお、免税手続にはパスポートの原本が必要で、購入した物品が記録された紙伝票を購入者のパスポートに貼付することとなっています。
観光庁による「訪日外国人消費動向調査」(2019年7月~9月期)によると、外国人観光客のうち、半数を超える56.1%が免税制度を利用しており、特に、中国78.6%、台湾78.0%、香港70.9%と、アジアからの観光客の免税利用が多くなっています。昨年10月に消費税が8%から10%に増税され、免税メリットは更に大きくなっているため、今後、更なる利用拡大が見込まれます。
免税販売は、レジにおいて店員がパスポートを受け取り、必要に応じ外国語を使って対応することになりますので、アルバイト店員含め、複雑な免税制度を理解する必要があります。しかし、京都の土産物店や伝統産業品店等は、東京や大阪などと異なり、小規模で高齢な経営者が多いという実態があります。
そこで、京都市観光協会では、京都市や京都文化交流コンベンションビューローとともに、2014年度の免税制度緩和以降、多岐にわたる免税店支援事業を実施しています。外国人対応は苦手という小売店経営者でも、免税店登録してみようと思っていただけるサービスです(いずれも無料)。
免税店とは何か、免税店になるメリットなど、免税販売に関する素朴な質問から、免税店の許可申請、免税手続に関するQ&Aなど、免税店の申請から導入後まで、専門の担当者がきめ細かくサポートしています。
免税店申請に必要な申請用紙や免税販売手続マニュアル(店内マニュアル)、免税販売において必要な外国語会話集などを京都市観光協会のウェブサイトに掲載しています。特に、免税販売手続マニュアル(店内マニュアル)は、店舗経営者が自身で作成するには手間がかかることから、どなたでも使用できる雛型を掲載。これにより申請負担が緩和されることから、京都市内のみならず全国の免税店から使用依頼をいただいており、その数は、これまでに1,000件を超えています。
京都市観光協会 免税店支援の取組 https://www.kyokanko.or.jp/tax/
免税制度改正や免税手続に関するQ&Aなど、免税店に必要な最新情報を収集し、メールマガジンとして提供しています。(2020年1月現在 配信回数:延べ81回 配信先:737件)
観光庁作成の「Japan. Tax-free Shop」ロゴが入った京都オリジナルのステッカーを提供しています(全4種類)。また、キャッシュレス対応をアピールできるよう、京都市が地域活性化包括連携協定を結ぶVisaと共同作成したステッカーも好評です。
「パスポートを提示してください」など、免税手続について指差しで説明できる4言語(英語、中国語簡体字、中国語繁体字、韓国・朝鮮語)のシートを提供しています。
免税手続の説明だけでなく、商品の案内などにも使える10言語(英語、中国語・北京語、中国語・広東語、韓国・朝鮮語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、タイ語、ベトナム語、ロシア語)による電話通訳サービス(オペレーターを介した3者通訳)やメール翻訳サービスを24時間提供しています。
電話通訳サービスについては、年間延べ約1,500件の利用があり、そのうち中国語の利用率が7割を超えています。最近は、外国人観光客が増加しているにも関わらず、この電話通訳の利用件数は減少傾向となっています。このことは、外国語研修などを通じて免税店側の受入対応能力もアップし、電話通訳に頼らずともインバウンド対応できていることの裏返しであると考えています。とは言うものの、返品やクレームなど、複雑な言語対応が必要な場合もあり、この電話通訳は免税店にとって、いざというときの心の支えになっています。
1~7までのサービスがあっても、いきなり外国人観光客の対応は不安という声に応え、専門スタッフが免税店を直接訪問し、手続きの流れをレクチャーする「免税手続トレーニング」を行っています。数ヶ国の旅行者を設定し、パスポートにおける入国日や在留資格の見方から、手続き上のトラブル実例などをお伝えし、不安の解消に努めています。これまでに対応した店舗数は100を超え、レクチャーしたスタッフの数は500名近くに達しています。
Part2につづく
Part2
・京都市内の免税店数は5年間で9倍増
・免税売上は年間220億円に ~中小免税店も売り上げ増~
・新たな転機、免税手続の電子化とは?
・メイドイン京都の伝統産業品を今後も外国人観光客に ~免税店支援を通じた持続可能な観光振興~
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