9月30日、京都市認定通訳ガイド(京都市ビジターズホスト)の第4期生が新たにデビューしました。認定式会場の京都経済センターに、活動範囲となる京都市・宇治市・大津市の3市長が揃い、約半年に及ぶ研修を経て口述試験に合格した46名の門出を祝いました。
TOPICS
・京都の魅力を海外に伝える京都市認定通訳ガイドとは?
・ガイド稼働率は、全国通訳案内士の約3倍
・存在感を増していく京都市ビジターズホスト
9月30日、京都市認定通訳ガイド(京都市ビジターズホスト)の第4期生が新たにデビューしました。認定式会場の京都経済センターに、活動範囲となる京都市・宇治市・大津市の3市長が揃い、約半年に及ぶ研修を経て口述試験に合格した46名の門出を祝いました。
京都市認定通訳ガイドは、高い語学力、ホスピタリティ、そして京都の知識と京都愛を兼ね揃えた人材を「京都市認定通訳ガイド(通称:京都市ビジターズホスト)」として京都市が認定する制度です。京都市観光協会が平成27年から毎年約50名ずつ、ガイドの募集と育成を行なっています。対象言語は、英語・中国語・フランス語・スペイン語の4カ国語。平成30年からは、対象地域に宇治市と大津市が加わり、現在までに計202名が京都市ビジターズホストとして認定されています。
地域に特化した通訳案内士の資格制度は「地域通訳案内士制度」と呼ばれており、全国35以上の地域にて制度が立ち上げられています。それぞれの制度にて、様々な研修や登録制度が採用されていますが、京都市ビジターズホストには、次のような特徴があると考えています。
約50名の定員に対し、7~11倍の応募があり、毎年高い倍率となっている本制度。応募者は、海外留学や海外勤務、客室乗務員などの国際経験を有している方、旅行会社やホテルなど観光事業に携わっている方など、バックグラウンドに富み、居住地も京都をはじめとする関西地域はもちろんのこと、中部や関東地方からの応募もあります。また、京都在住で日本語が堪能な外国人の方からも多数お申し込みがあります。
こうした方々を対象に書類審査と面接審査を行い、高い語学力とコミュニケーション能力、京都観光に対するパッションを持った方々、約50名を研修受講生として選考しています。語学要件については、例えば英語は、TOEICの場合730点以上という基準を設けておりますが、応募者の平均は第4期生においては、824点となり、審査を突破した研修受講者の平均は880点を超えるという状況です。
その後の研修は約半年。最初の「基礎研修」では、旅行会社やお客様との事前のやりとり、準備の仕方、ガイド当日の注意事項などについて、現役の通訳案内士を講師に通訳ガイド業務のイロハを伝授。また、京都に関する基礎知識やホスピタリティに関する研修を経て、ガイド業務を実際に体験する実地研修に臨みます。留学生をお客様に見立て、班別に人気観光地をめぐり、他の受講生のガイディングも見ながら自分がどのレベルにあるのかを確認するとともに、講師から指導を受けます。続いての「専門研修」では、花街、茶道、京料理、建築、庭園などについて、各業界を代表する豪華講師陣から知識を習得します。この「専門研修」カリキュラムが充実しているということで、既に活躍中の全国通訳案内士からも、改めて勉強したいと受講希望があるほどです。そして、研修受講の成果を面接形式の「口述試験」で確認し、基準ラインを超えた方を、京都市ビジターズホストとして認定しています。
この半年間の研修を共にすることで、ビジターズホスト間の絆は深いものとなり、研修修了後も互いに下見にいったり、最新の観光情報の交換を行ったり、中には共同で観光業を起業しているメンバーもいます。また、体調不良などの急な事情の際、自分の代わりのガイドとして依頼できる関係構築も、ガイドとして大きな財産となっています。
認定後のサポート体制が充実しているのも、京都市ビジターズホスト制度の特長です。まず、認定式終了後の事業者面談会。今回、第4期生向けには、ホテルや旅行会社、企画運営会社など通訳ガイドとの接点を希望する事業者20社の参加があり、デビューしたてのビジターズホストは、今後の仕事受注につなげるべく、関心のある事業者に積極的に自己アピール。通訳ガイドとの接点を希望する事業者も年々増えています。また、検索サイト「クレマチス」でもマッチングをサポート。ビジターズホストそれぞれが紹介ページを持つことができ、ガイド可能なスケジュールを公開しています。そのほか、更なる知識・技能向上に向けたスキルアップ研修も年間20回程度実施し、観光地等で研鑽を積んでいます。
また、京都市観光協会で運営する二条城や京都迎賓館での公式ガイドツアー(英語)にも、ビジターズホストが従事。こうした定期ツアーでガイディングの実践経験を積み、より臨機応変な対応が求められるプライベートツアーにステップアップする導線を組んでいます。育児等の家庭環境により十分なガイド活動ができない方などには、解説文の作成という業務も。これは、社寺の特別公開事業において、外国人観光客向けに、通訳ガイドならではの視点で、京都の歴史やストーリーを分かりやすく編集した紹介文の作成に携わるというものです。
文化財特別公開パンフレット
通訳ガイドの資格を取っても、実際にガイドの仕事を受注していくのは容易ではない現実があるのも事実です。こうした中、京都市ビジターズホストは、どの程度、活動しているのでしょうか?
本年8月、第1期生~3期生156名を対象に実施した実態調査の結果、65.3%の京都市ビジターズホストが本業あるいは副業の形で通訳ガイドを実施していることが分かりました。少し古い数字ですが、全国通訳案内士を対象に行われた調査(平成26年:観光庁「通訳案内士の就業実態等について」)では「兼業あるいは専業でガイドを行っている」資格保有者は24.3%という結果でしたので、資格の活用率では、京都市ビジターズホストは、全国通訳案内士の約3倍の実績となっています。
なお、この156名のビジターズホストが従事したガイド件数は、年間で計6,413回に及び、案内した外国人観光客は延べ25,748名、ガイド活動に伴って得た報酬の合計は1億1,785万円にも達します。ボランティアではないプロの通訳ガイドとして、観光消費の拡大、雇用の創出にも寄与しているところです。
ガイド活動の範囲は、一般の観光客の域を超え、国際会議や大規模イベントなどのMICE分野にも広がっています。今年、日本で開催され大いに盛り上がったラグビーワールドカップでは、2017年5月、京都迎賓館で開催されたプール組分け抽選会を機に入洛した関係者の市内視察ツアーにビジターズホストが従事しました。また、本年9月、京都で開催された国際博物館会議(ICOM)でも、10名以上のビジターズホストがレセプションパーティーに参加し、世界各地から集まったVIPの対応を行うとともに、エクスカーションツアーにアテンドし、非常に高い評価を得ました。
京都市ビジターズホストは毎年約50名ずつ認定・登録しているところですが、登録人数の伸び以上に、案内した外国人観光客数が増えています。これは、登録後、年数が経つにつれ、経験と能力が向上し、より多く稼働しているのが背景にあります。例えば、第1期生では、登録後1年目よりも2年目、3年目の方が、ガイド活動が活発化しているのです。今回、第4期生が認定され、京都市ビジターズホストは200名を超えました。こうして登録者数が増えると、ビジターズホスト同士のネットワークも強化され、また、京都の観光業界における存在感も増していくという効果もあります。
通訳ガイドの業界は、平成30年1月の法律改正により大きく変わりました。それまでは、国家資格を有する者のみ行うことができたのに対し、今では誰でも自由にガイド業を行うことができるようになったのです。一方で、だからこそ、京都についての深い知識と専門性を有する確かなガイドが求められるのも事実です。京都市ビジターズホストは、そうした需要にしっかりとお応えできるガイドでありたいと思っています。
また、スマートフォンの普及やAI技術の進歩により、機械によるガイディングも、その需要が高まっているところですが、富裕層などには、人によるカスタマイズ対応が求められているのも事実です。特に、京都の奥深い魅力をしっかりと伝えるには、地元に住み、四季の移ろいを肌で感じながら、その歴史や生活文化を伝える、地域ガイドの存在が欠かせません。
京都市ビジターズホストは、ひとりひとりが観光大使として、その深い京都愛で海外ゲストをおもてなしします。京都市観光協会(DMO KYOTO)は、質・量ともに唯一無二なガイド制度として、この京都市ビジターズホスト制度の更なる発展を図り、京都観光の満足度や観光消費の向上を通じ、持続可能な観光の推進に寄与してまいります。
公益社団法人京都市観光協会 受入環境整備課 加藤郁理