前期経営戦略の総括
平成29年度(2017年度)11月に観光庁から日本版DMOとしての認定を受けたことを契機に、平成30年度(2018年度)から令和2年度(2020年度)を対象に 策定した前期経営戦略では、「事業者支援」「政策課題解決」「科学的経営」という3つの柱を掲げ、従来の国内観光客向けの集客事業を主体とした組織経営方針から、会員事業者の経営や地域の文化振興組織・団体の観光振興に対する取り組みを支援する事業を主体とした、京都の観光業界・観光地マネジメントを担う組織(DMO)を目指した組織経営方針の転換を図った。
加えて、京都文化交流コンベンションビューローの国際観光事業の移管受入れにより、国内観光振興と国際観光振興を一体的に推進する体制を確立し、国内外における京都観光需要創出に向けた情報発信と、市内宿泊施設との信頼関係に裏打ちされた月毎の客室稼働データや宿泊客属性の収集・分析体制を構築し、わが国でもトップレベルのDMOとしての立場を明確にした。
当初の想定では、令和3年度から新たな経営戦略を策定する予定であったが、コロナ禍の影響で先行きが不透明ななかで新たな戦略を策定することが困難であったことから、対象期間を1年延長し、令和3年度(2021年度)も引き続き前期経営戦略の方針を踏襲した。
コロナ禍にともない事業環境が大きく変化したものの、経営戦略に従って行政との連携を強化してきたことで、観光業界の危機を乗り切るための支援事業の実行部隊としての役割を担うことができた。
2017年度のDMO登録時は収入の8割を事業収入が占めていたが、翌年度から補助金の構成比が拡大した。これは、京都文化交流コンベンションビューローから国際観光事業の移管を受けたことによるものである。平成30年度(2018年度)には受入環境整備事業を、令和元年度(2019年度)にはプロモーション事業を対象にした京都市からの補助金が、新たな収入として加わった。その結果、コロナ禍直前の令和元年度(2019年度)は、事業規模(収入ベース)が12.5億円に達し、前期経営戦略で設定していた目標値12.0億円を突破した。
コロナ禍が始まった令和2年度(2020年度)は、緊急事態宣言などの影響で観光客を対象にした事業の収入が激減した。一方で、京都市の補正予算を背景にした感染症対策関連事業のための補助金を受けたことで、事業規模は15.0億円に達し、これに占める補助金の構成比は7割を超えた。令和3年度(2021年度)はコロナ禍が2年目に入り、国や京都市の補正予算にもとづく緊急対策事業の規模が縮小したことで補助金額も減額となり、伝統行事や各種キャンペーンの中止も相次いだため、事業規模は8.0億円と前期戦略開始当初に近い水準にまで減少した。
会員数は、コロナ禍前の令和元年度(2019年度)には、多様な分野からの新規参入事業者からの入会が進んだことで1,525社にまで達した。その後、コロナ禍の影響で退会する事業者が増加したものの、会員数は前期経営戦略開始当初の水準を下回ることは無く推移している。ただし、コロナ禍の影響を差し引いたとしても、目標とした1,800件を達成するほどの勢いでの拡大に至ったとは言えなかった。今後は、入会いただくことの意義やメリットの分かりやすい発信や、会員同士のコミュニケーションの促進、会員制度の充実などに取り組むことで、コロナ禍からの回復に乗じた、運輸・観光・サービス産業以外の業種も包含した、新規参入事業者の巻き込みを図っていく必要がある。
例年、京都市が発表する京都観光総合調査における「紹介意向(京都での観光を友人にお勧めしたいと思うかどうか)」の回答結果をもとに算出したNPS※は、コロナ禍前の令和元年度(2019年度)まで横ばいで推移した。コロナ禍以降は、京都観光総合調査の調査票本の確保が難しく、外国人を対象にした調査は中止、日本人を対象にした調査も秋期のみ(本来の標本数の4分の1)しか行われなかったため、効果測定ができていない状況である。コロナ禍などの不足の事態の影響を受けずに検証できる指標の設定を、あらためて検討する必要がある。
- Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)の略称で、商品やサービスなどへの愛着度を評価するための指標のひとつ。ここでは、「京都観光を親しい知人にどれくらい薦めたいか?」という問いに対して7段階評価で回答してもらい、7段階目(最も高い評価)で回答した人の割合から、1~5段階目(比較的低い評価)で回答した人の割合を差し引いた値として定義している。
現状把握と今後の展望
2.1. 外部環境分析
本章では、現在の京都市観光協会をとりまく外部環境を「社会」「経済」「政策」「技術」の観点ごとに分析する。
2.1.1. 地域社会
京都市において令和元年度に実施された市政総合アンケート「京都観光について」によると、「買物環境の向上」や「交通機関等の発達」など、観光によるプラスの効果に対して「影響はない(実感を得られたことがない)」と回答した人が「よく経験する」と回答した人より多かった。逆に、「混雑」や「マナー違反」などの観光によるマイナスの効果に対しては、「よく経験する」と回答した人が「影響はない」と回答した人より多かった。観光によるプラスの効果を実感できる機会の創出と、マイナスの効果を感じる経験の抑制を図っていくことが求められている。
国連が2015年に発表した「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」は世界中で共有されており、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための取組があらゆる場面で求められている。観光業界においても、UNWTO(国連世界観光機関)とUNESCO(国連教育科学文化機関)が「第4回 観光と文化をテーマとした国際会議」を2019年に京都で開催し、「地域コミュニティ」「文化」「観光」の理想的な関係を築くことでSDGsの達成につなげていく「京都モデル」が提唱された。
こうした背景と今後のコロナ禍からの復興を見据えて、京都市および京都市観光協会は、令和2年(2020年)11月に「京都観光行動基準(京都観光モラル)」を策定した。京都観光モラルは、京都が京都であり続けるために、観光事業者・従事者等、観光客、市民とともに大切にしていきたいことを明文化したものであり、今後はこの普及啓発に取り組むことになっている。
京都観光モラル 事業者向けの行動基準4項目
2.1.2. 域内観光経済
インバウンド需要の拡大に伴い、京都市内の観光消費は一時的に年間約1.3兆円にまで到達した。これは、京都市民の年間総消費支出額の過半数を占める規模である。観光消費由来の市内労働者数が全体に占める割合も約2割にまで達していると推計され、観光は京都における主要産業の一つと言える状況にまで成長した。
コロナ禍が始まってからは、京都観光総合調査の実施が困難であったことから消費額の推計発表が見送られている。ただし、当協会が実施する市内主要ホテルを対象にした調査によると、コロナ禍前の2019年の客室稼働率平均値は81.2%であったが、2020年以後はこれの半分以下の水準に留まっていることから、観光消費額も相当に下落していると考えられる。
京都市内の宿泊施設は、平成27年度(2015年度)末時点では1,228件(29,786室)であり、急増する外国人観光客需要を受け入れるには容量不足が懸念されていた。その後、新規参入施設が相次いだことで、コロナ禍直前の平成30年度(2019年度)末には施設数は約3倍の3,993件に、客室数も2倍近くの53,741室まで増加した。ゲストハウスなどの簡易宿所の増加で施設数が増えた一方で、有名ブランドホテルが続々と京都市内に進出したことで客室数が増加した。ただし、新規参入が増えることで似たような立地や価格帯の施設による競争が激しくなり、これに伴い徐々に廃業件数も増加して、コロナ禍に突入した令和2年度(2020年度)には廃業件数が新規開業件数を上回る事態に陥った。それでも、数年前から建設計画が進んでいた大型の施設は、多少の延期を余儀なくされたものの無事に開業が始まっているため、総客室数はピーク時から大きく下落することは無く推移している。
当協会で実施した、京都の観光業界の従事者を対象にした調査によると、コロナ禍発生直後の2020年の収入が前年から減少したと回答した人は過半数を占めた。2021年の収入は2020年からは改善したものの、依然としてコロナ禍前の2019年を下回っている人が約1割存在する。また、他業界へ流出してしまった人材も少なくないと想定され、観光業界の雇用環境は厳しい状況であると言える。
2.1.3. 国、京都市等の政策
京都市では、国際文化観光都市としての魅力を高め,及び観光の振興を図る施策に要する費用に充てることを目的に、平成30年(2018年)10月1日から宿泊税の課税が始まった。税収規模も大きく、市民生活の豊かさの向上に大きく貢献している。
平成27年度(2015年度)から登録申請の受付が始まった観光地域づくり法人(DMO)は、令和3年(2021年)11月4日時点で登録件数が213件、候補法人の登録が90件にのぼっている。地域の実情に合わせて様々なDMOが設立されるなか、観光庁は令和2年度から重点支援DMOの公募を行い、京都市観光協会は2年連続でこれに選ばれている。日本政府は「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」において、世界水準のDMOを100法人形成することを掲げており、今後もDMOを核とした観光地域づくりの推進が進められると考えられる。
その他、以下に掲げるような法律や条例の改正が近年行われ、今後も観光市場の成熟に応じた規制緩和や、新たな業態の登場に対応するための制度整備、観光客に受益者負担を求める課税などが行われていくと考えられる。
- 住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行と、京都市における独自ルールの整備
- 通訳案内士法の改正(無資格者でもガイドができるように。有資格者は定期研修が義務付け。)
- 免税手続きの電子化
- 旅行業法の改正(地域限定旅行業の登録用件緩和。ランドオペレーターの登録制度開始。)
- 国際観光旅客税(出国1回につき1,000円の課税)の導入
2.1.4. テクノロジー
世界中でインターネットの普及が進んでおり、その勢いは人口の増加率を大きく上回っている。とくに、携帯電話利用者が総人口に占める割合は約7割に達しており、当協会が運営する観光客向けのWEBサイトの閲覧のためにスマートフォンを利用している人の割合も常に6割を超えていることが、観光業界に与える影響は大きい。無料のWiFiサービスの整備や、旅行先地域で利用できる通信SIMカードの購入が簡単になったことも相まって、かつては旅行前に自宅でインターネット検索をして情報収集していた人が、今後は旅行先に到着してからスマートフォンで情報収集できるようになっており、旅行者の意思決定の間際化が進むと考えられる。
そして、SNSの利用者は世界総人口の半数を突破し、今後はますます個人間での情報交換が容易となる時代が到来すると考えられる。オフィシャルメディアやマスメディアによる情報発信と、個人間での情報交換の役割を見極めて、旅行者に対して適切に情報を提供していくことが求められる。
2021年1月時点の全世界におけるインターネット利用状況
動画や音楽、ゲーム等をオンラインで随時利用できるサービスが成長しており、コロナ禍の巣ごもり需要との相性も良いため拡大が続いている。これらのサービスでは、利用者のプロフィールや利用履歴を電子データで記録してマーケティングに活用することができる。また、商品数の上限制約も事実上無いため、あらゆるユーザーからのニーズに応えることができる。そして、オンライン決済技術が発達したことで、月額制課金のビジネスモデルも可能となり、顧客の囲い込みが他業界と比べて容易である。こうした特徴から、今後はこれらのサービスが消費者にとって最も身近な娯楽の一つになることが予想され、アフターコロナにおいてはインターネット上で視聴した動画やゲームが、旅行を思い立つきっかけになることが一層増えると考えらえる。
ストリーミングメディアへの全世界加入者数推移
その他、以下に挙げるような動向が注目されており、次世代技術の普及が観光業界に及ぼす影響を見据えて、これらを活用した新しい旅行体験の開発や、観光だからこそ味わうことができる魅力を訴求する必要がある。
- 5G通信回線の普及による動画、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)などの技術を活用したサービス開発
- OTA(オンライン旅行予約サービス)の普及
- キャッシュレス決済インフラの普及
- 人工知能(AI)によるビッグデータ解析に基づく生産性向上
2.1.5. 今後の京都観光業界の展望
世界全体の国際旅行者数は、コロナ禍直前の2019年に14.58億人まで増加している。国連世界観光機関(UNWTO)が2014年に発表した予測では、14億人に到達するのが2020年であったため、予想を上回る勢いで市場が成長してきたことになる。しかしながら、コロナ禍の影響で2020年は3.81億人まで激減し、コロナ禍前の水準まで回復するのは2023年以降となる見通しである。2014年当時の予測によると、アジアを中心とした人口増加と新興国の経済成長を背景に、2030年には18億人まで増加することになっており、この長期的な傾向が覆るとは考えにくいが、遅くとも2025年以降から国際観光市場の成長が再開することは期待できるだろう。
かねてより計画されていた文化庁の京都移転が令和4年度(2022年度)から始まる。さらに、令和5年度(2023年度)には、京都市立芸術大学が京都駅東側への移転を予定している。これらの動向がきっかけとなり、今後はより一層、文化と観光の融合の真価が問われることになると考えられる。
令和7年(2025年)には「大阪・関西万博」の開催が予定され、ワールドマスターズゲームズ関西2021はコロナ禍の影響で令和8年(2026年)への延期が検討されている。次期経営戦略の期限である令和7年度(2025年度)末に合わせて、これらの世界的なビッグイベントが関西地方で開催されることから、早い段階から外国人観光客の受入環境整備を進める必要がある。
一方で、国際情勢の悪化という不安材料も存在する。香港における政情不安、台湾有事の懸念、ウクライナを中心とした欧州の混乱やこれに伴う原油高などが、国際観光市場に与える影響は計り知れない。
2.2. 内部資源分析
本章では、現在の京都市観光協会の事業領域を、顧客のニーズを起点にして分類し、「強み」や「課題」を整理する。
- 約1,500社の会員事業者はもちろん、京都観光に関わりのあるあらゆる事業者も京都市観光協会にとってのステークホルダーであり、これらの事業者の活動を支援することを通して、その先にいる観光客に対して常に新しい体験価値を提供し、市民生活の豊かさにも貢献していくという、経営理念の実現が求められている。
- 潜在顧客が多様である以上、京都市観光協会に向けられる関心も様々であり、それらのニーズ一つひとつに寄り添った関係性作りや支援メニューの開発が重要である。
- 以上を踏まえつつ、現状の事業を整理すると、京都市観光協会の事業は大きく3つの分野に類型化することができ、これらの相乗効果を最大化することが、持続可能な経営を実現するうえで欠かせない観点である。
3つの事業分野の位置づけと、各事業の関係性
事業分野ごとの強みと弱み
2.3. SWOT分析
本章では、外部環境分析と内部資源分析の結果をもとに、組織としての「強み(Strength)」「弱み(Weekness)」と今後想定される「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの観点から、有効と考えられる事業方針を、以下の通り導き出す。
強みを活かして機会を最大限に利用するための事業方針
- 京都観光に関する様々な情報が集積する観光案内所を運営してきた実績と、チャットボットやオンラインミーティングなどの次世代技術を組み合わせ、観光案内分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する。
- 国内最先端の取組である独自の宿泊統計事業や、コロナ禍を契機にはじめた事前予約システムを通して蓄積された予約者情報の活用など、データを活用した事業を強化する。
- 長年培ってきた文化財特別公開事業のノウハウを活かして、文化庁の移転をはじめとしたビッグイベントと絡めた旅行商品の開発支援やキャンペーンの運営を行う。また、オンラインでの予約購買行動が普及することを見据えて、OTA等の関連するサービスの活用や連携を推進し、DMOだからこそできる地元に特化した目線で、多様な旅行商品を分類して流通させることを目指す。
- これまで育成してきた200名を超える認定通訳ガイドの活躍を支援するため、外国人向けのガイドツアー商品の開発を強化し、海外情報拠点(令和3年度は世界6都市に設置)と連携して現地メディアへ情報を提供することで、外国人観光需要の復活に備える。
強みを活かして脅威を乗り切るための事業方針
- 前期経営戦略のもとで開設した事業者向けのWEBサイトや、購読者数が約1.5万人にまで増加したメールマガジンを活用して、事業の告知だけでなく成果報告についても積極的に発信し、DMOとしての実績を周知することで、当協会の強みである「信頼」の更なる醸成を図る。
- コロナ禍後に急激に観光需要が回復することで、かつての問題が再発してしまうことを避けるために、行政と連携して「京都観光行動基準(京都観光モラル)」の普及(とくに、事業者向けの啓発)に取り組む。
- 約1,500社の会員基盤を中心とした観光関連事業者が集積する京都の強みを最大化するために、業界の従事者が交流できる機会を創出し、ノウハウの共有や、お互いの強みを掛け合わせることによるイノベーションを後押しし、コロナ禍の危機を乗り切る。
- 人口減少を背景とした行政予算の減少を見据え、行政からの補助金のみに依存しない財源構成を維持するべく、民間企業からの協賛を原資とした社会貢献型事業の開発を目指す。弱み を補うことで 機会 を捉えるための事業方針
弱みを補うことで 機会を捉えるための事業方針
- ワールドマスターズゲームスや大阪・関西万博など、今後予定されているビッグイベントは関西地方一帯で広域に開催されるため、京都市域単独では観光客に提供することが難しい体験(アウトドア系の体験など)を、周辺地域の自治体やDMOと連携することで補完し、機会損失を回避する。
- 会員事業者の経営情報や、職員の営業活動をデータベースで管理できるシステムを開発することで、ノウハウの継承や普遍化、会員制度や会員向けサービスの充実につなげる。
弱みと脅威が重なることによる最悪の事態を回避するための事業方針
- DMOという特殊な経営環境を踏まえつつ、専門性が求められる職員の能力を最大限に発揮するための人事評価制度を導入することで、職員の成長を促すとともに、人材やノウハウの流出を防ぐ。
- これまで整備してきたスケジューラや経費管理システムなどのICTインフラの充実を継続し、コロナ禍にともなうテレワークの普及などの働き方の変化への対応も進めることで、多様な人材からの貢献を期待できる組織づくりを目指す。
3. 経営方針
3.1. 経営戦略の柱と目指すべき姿
本章では、外部環境分析と内部資源分析を踏まえて、今後の経営方針を整理する。
- 京都市観光協会の経営理念は、定款第3条に掲げられており、1960年の設立以来、普遍的な考え方として受け継いできたものであり、次期経営戦略においてもこれを前提とした経営方針を掲げることとする。
- 次期経営戦略の経営方針は、京都市が策定した「京都観光振興計画2025」の方針と、前期経営戦略の3本柱を踏襲しつつ、前章の分析結果を踏まえて、DMOならではの視点での差別化を意識した表現で、再定義する。さらに、既存の3本柱を支える経営基盤強化の方針として、「人材育成」「ICTインフラの強化」の推進を掲げる。
- これらの方針のもとで事業を展開することを通して、次期経営戦略の有効期限である2025年時点に組織としてあるべき姿(ビジョン)を定める。
3.2. 経営戦略に基づく具体的な取組方針
2025年のあるべき姿(ビジョン)を達成するために、2.3 SWOT分析で導き出した事業方針を、戦略の柱や経営基盤強化の方向性との対応がわかるように、以下のとおり整理する。
3.3. 指標と目標設定
次期経営戦略の柱に対応するかたちで、以下のとおり指標と目標を設定する。
- 市民からも理解される持続可能な観光の実現につながる旅行体験を開発するためには、多様な旅行商品を取り扱うことが重要であるという考えのもと、「取り扱い旅行商品数」を指標として設定する。また、開発した商品の流通促進や情報発信事業を評価するために、当協会が独自に開発した指標である「行こう指数(京都観光関連のWEBサイトの閲覧回数や、京都観光に関する報道状況をもとに算出)」を活用する。
- 担い手の誇りを評価するための指標として、業界従事者の満足度を把握する調査を行うことを想定する。
- 観光案内所DXと旅行商品予約者情報の活用を、情報資本への投資を象徴する取組として位置づけ、これらを評価するために「FAQ更新回数」と「観光客向けメルマガ読者数」を新たな指標として追加する。また、業界の生産性向上を評価するために、宿泊産業の経営指標であるRevPAR(1室あたりの売上に相当)を、当協会のホテル統計のデータをもとに把握し、これをコロナ禍前の水準にまで回復させることを目指す。
- 前期経営戦略を踏襲し、会員数と事業規模を指標に採用する。さらに、実績報告活動の状況を直接的に評価するため、事業広報の報道件数を毎月集計して評価する。
- 「人材育成」と「ICTインフラ強化」に関しては指標を設定せず、それぞれの取組方針に掲げた内容を着実に実施することを当面の目標とする。
3.4. 求められる職員像
具体的な製品や資産を持たない業態である当協会にとって、目まぐるしく変化する環境に適応しつつ、DMOならではの強みを持続的に維持・成長させていくためには、職員ひとりひとりの能力や資質の向上が不可欠である。そこで、以下のとおり次期経営戦略の3本柱に対応させて、求められる職員像を定義する。ここに掲げる内容は、今後導入を予定する人事評価制度にも反映する。