「多様な旅行者に効果的に訴求するMEO対策とは」をテーマに「第11回京都インバウンドカフェ」を開催しました(2024年8月1日(木))

UPDATE :
2024. 09. 26

SUMMARY

世界中で急激に利用者数が増えているGoogleビジネスプロフィールを効果的に活用し集客につなげていくために、「基本情報の編集・メンテナンス」「記事や写真の投稿」「口コミの返信」「予約動線の設置」が特に重要であることが示されました。加えて、生成AIを積極的に活用していくことで、多岐に渡る情報発信ツール管理の効率化を図りつつ、分析・戦略策定等が短時間で簡単に行えること等が紹介されました。

日時:2024年8月1日(木)16:00~18:00
会場:京都経済センター

プログラム:
(1)イントロダクション

(2)対談:多様な旅行者に効果的に訴求する MEO(Map Engine Optimization)対策とは

  • 宮本 秀範氏/(株)リーゴ代表取締役
  • 寺西一章氏/アミタ(株)京都ハンディクラフトセンター事業部営業部長
  • コーディネーター:堀江 卓矢/(公社)京都市観光協会DMO企画・マーケティング統括官

(3)グループワーク

※MEO(Map Engine Optimization)対策とは、Google Mapで店舗や施設を適切に表示させるための取り組みのことです。

MEO対策は全ての観光事業者に必要不可欠に。MEO対策に必要な5段階の手順。(宮本氏)

  • 株式会社リーゴでは、観光にデジタルをかけ合わせて課題解決を目指している。BtoC、BtoB、BtoG、すべての領域に対して実施している。もともとは、旅行予約サイト「Liigo」で、好みの体験を比較し、最安値で予約できる仕組みを提供してきた。
  • 「エリアコンパス」というサービスも提供しており、Googleビジネスプロフィール(以下、GBP)やInstagram、XなどのSNSを連携させたり、複数店舗を一括して管理できたり、AIが自社や競合の分析・投稿などを行ってくれるという特徴がある。
  • 3つ目の事業「パートナーコンパス」では、SNSの運用サポートやインフルエンサーの紹介、集客・売上アップにつながるようデジタルを活用したコンサルティングを行っている。
  • Googleマップは、現在利用者が最も多いと言われ、月間で世界では12億人以上、日本では約5000万人近くが利用している。観光庁の「観光DX推進のあり方に関する検討会」でもGBPへの情報掲載の必要性について指摘された通り、観光に携わる全ての事業者にとって重要性が増している。
  • 「(近くの)◯◯」で検索する人は3年で約8倍になった。直近3〜4年では、Googleマップに予約動線ができた。ユーザー目線からすると、全ての旅行分野における予約や購入ができるようになったことは、非常にインパクトが大きい。価格なども比較してくれるようになり、最安値で予約ができる。つまり、何かを探す際に一番最初に使うツールになっている。旅行前から旅行後に至るまで、全てを網羅して予約ができるようになった。
  • Googleビシネスプロフィールでできることを3つに絞って説明すると、1つ目が情報発信、2つ目が予約動線の構築、3つ目がユーザーの動線分析。GBPに取り組んだ支援先はしっかり数字が伸びている。ホテルは予約へつなげる動線が引けるし、飲食店などの予約も伸びるケースが多い。3ヶ月で過去の900%の閲覧数になったという事例もある。運用の優先順位は以下の通り。
  • 「基本情報の編集・メンテナンス」。まだ何もできていない方はここから始めてほしい。
  • 「写真」。我々の社内統計によると、写真は定期的に更新する方がよい。更新することで、更新後2週間で5%も多く集客できたというデータが出ている。
  • 「投稿」。イベント投稿などもできるが、写真と同様に、更新していった方がよい。
  • 「口コミの返信」。Googleタスク、GBPには返信機能がある。口コミによるお客さんの声を実際のサービスや商品の改善につなげられていないという声もあるが、こちらの対応も重要になる。
  • 「インサイトの確認」や「予約動線の設置」、その上で「広告運用」をしていくこと。
  • これらの中で特に重要なのが「定期的な写真の更新や投稿」。Googleマップは、写真が更新された順に上位に出てくる。その中でよく見られているものがあれば、価値のある写真と判断するアルゴリズムを持っている。反対に、価値のない写真であれば、どんどん表示順位が下がっていく。精査して良い写真を撮ることも大事だが、定期的に写真をアップしていくことが大切になる。
  • 2つ目は「予約動線」。特に飲食店、民泊や旅館、チケット販売、土産物屋は取り組んだ方が良い。Googleマップは約90%以上の個人旅行者に利用されているが、訪日観光客の多くは国内大手OTA(Online Travel Agent)やグルメサイトを知らないので、それらで予約するという選択肢がない。そして、Googleマップに検索して電話番号が掲載されていても、そこに電話をかけて予約できる人は少ない。Googleマップに予約動線があれば、事業者が英語、中国語、韓国語が話せなくても予約を受けることができるので、重要なポイントである。
  • ホテルに関しては、様々な旅行予約サイトで予約ができるので、訪日観光客も日本人も複数の選択肢がある。民泊や旅館は価格変動が比較的起きづらいが、GBPを活用すれば、競合他社との料金比較も確認できる。これらは通常毎月数万円かけて分析をしたりするものだが、GBPだと3ヶ月無料で見られるので、この機能だけでも非常に価値がある。Googleに掲載するのは基本的にはどの分野も無料でできるし、OTAのように手数料がかからないのも利点。
  • チケット販売のある施設に関しては、飲食店同様のロジックとなる。また、お土産屋に関しても、観光後に購入されることが多いと思うが、Googleマップを見て、その周辺のお土産屋さんを探すケースもあると思う。Googleマップ内には、お店のGBPからオンラインショップへの動線を作れるので、そこからユーザーを増やすことも可能。
  • 宿泊施設に関しては、Wi-Fiや飲食店、露天風呂の有無などの施設情報を設定しておくことで、それらをかけ合わせた検索をされた時に引っかかるようになる。施設詳細を登録するかしないかで売上にダイレクトに響いてくるので、設定しておくとよい。
  • GBPの登録状況を調べたところ、京都は69%だった。全国平均が5%なので、比較するとかなり高い。運用の状況もリサーチしてみたが、他都市よりも色々と取り組んでいる業者が多かった。

京都市内でのGBPの登録状況(堀江)

  • 当協会で、京都市内でのGBPの登録状況を調べてみた。2023年11月から2024年1月、年末年始にかけてのタイミングで調べたところ、店舗、施設で登録していたのが1465軒。京都市内のお店の数は、恐らく登録している数の10倍以上あるのではないかと思われる。
  • 京都らしさを感じられる業種にジャンルを絞り、ホテル、お寺、懐石料理の3つの登録状況も調べてみた。ホテルは約500軒、お寺が約900軒、懐石料理は約100軒だった。5点満点で評価される星については、どのジャンルも半分以上が星5つがついていた。ホテルだと約60%、飲食店だと70%以上が5つ星という結果だった。他都市との比較はしていないものの、非常に高い数値なのではないかと考えられる。口コミは、ホテルの場合は平均すると約24件。一方でお寺だと平均で5件、飲食店だと平均で7件であった。業態によって口コミのつきやすさは違う。ホテルは滞在時間も長いし、お客さんも印象に残りやすいので嫌なことがあったり、感動することがあったらコメントしやすいと思うが、お寺や飲食店は滞在時間が短くてコメントをしてもらえるまでの機会にはつながらなかったのではないかと考えられる。
  • 星の付け方は、日本人と外国人で違いがある。例えばホテル500軒の星を見てみると、日本人による星の付け方は平均で4.11。一方で外国人だけで集約すると4.48。比べてみると結構差があるが、よく言われているのは外国人と日本人の採点方法の違いでこのような結果になると言われている。外国人は、基本的に減点方式で採点することが多いので、特段嫌なことがなければ5をつけてくれる方が多い。一方で日本人の多くは3をつける方が多い。外国人だったら”普通”が5のところ、日本人は3をつけるので、よっぽどいい体験をしたかどうかの違いで差が出てくる。どのジャンルでも、外国人の方が若干高め出る傾向がある。
  • 京都のある事業者さんはその点を意識されており、基本的には外国の方だけに口コミをしていただいた方がデータが良くなると考えていると伺った。星の結果を見て、この飲食店は評価が高い店だなと思われ、さらにまた外国の方の来店が増える流れを狙っているそうである。もともと日本の方を大事にされているお店にとっては難しい取り組みかもしれないが、そのような事例もあった。
  • ​Quality​(品質)、​Service​(サービス、接客)、​Cleanliness​(清潔さ、清潔感)、Atmosphere​(雰囲気)の4つの観点でみる「QSCA分析」も行った。京都のホテル業界の分析結果は、品質はすごく高いが、接客と清潔感はそれに比べると少し劣るという結果が出ている。口コミの中でポジティブな部分を上から抜き出し、そこでよく使われているキーワードも出した。1番多いのは当然「満足」という言葉だが、その次は「便利」や「ロケーション」が挙がっていることから、物理的な条件を評価していることが多いということがわかる。続いて「親切さ」や「フレンドリーさ」などのキーワードが出てくる。ネガティブな口コミに関して、星が1つしかついていないような口コミのキーワードを見ていくと、例えば予約のトラブルがあったり、フロントやチェックインの対応がよくなかったということに関するものが出ていた。わざわざこのような「QSCA分析」をしなくとも、自社の施設の5つ星のコメント、1つ星のコメントを見るだけで、気付きがあるのではないかと思うので、今日を機会にぜひ見ていただければと思う。
  • お寺だと「国宝」や「如来」など文化財そのものを評価するキーワードが並び、ネガティブなキーワードでは「撮影」があった。これは撮影ができないことに対する不満などが考えられる。飲食店だと、食事そのもののことや、おもてなしの言葉、英語が通じるなどが評価され、ネガティブなキーワードでは料理が高すぎるのではないかという「価格」に対しての意見があった。また接客が良くなかったなどもあった。
  • みなさんにとっては一つ一つの施設、自社の施設の評価だが、観光協会にとってはみなさんのGBPのデータを一緒に分析していくことで、今の京都の状況が見えてくる。またエリアで見ることで自社の施設の強みや弱みが見えてくるのではないかと思う。このような分析を株式会社リーゴのサービス「エリアコンパス」などを活用していけると良さそうだなと考えている。

「京都ハンディクラフトセンター」では施設情報のタイムリーな更新と1週間以内のコメント返信を意識(寺西氏)

  • 「京都ハンディクラフトセンター」では、GBP、SNSではFacebook、Instagram、YouTube、観光業界でよく出てくるtripadvisor、LINE、Webサイトを運営している。当施設ではGBPの中でも「口コミの回答」を強化している。基本的には口コミが入ったら社員数名でチェックできるようGmailに通知が飛ぶようになっている。星の評価だけの口コミには対応はしないが、良くも悪くもコメントがあった場合は、返信をするようにしている。複数名で回答し、回答が完了したらそれをグループ内で共有するようにしている。Tripadvisorでの口コミの中には、正直悪いコメントもある。その口コミを迅速に対応するために返信していた経験から、Googleマップも同様に対応するようになった。
  • 以前、某大手会社の一日観光ツアーのランチ場所に当施設が使われていたことがあり、来店客の2〜3割がこのツアーの参加者が占めていた時代があった。バスツアーで連れて来られてお土産物が並ぶ場所というと、あまり良い印象を持たれないようで、当時はその参加者から低い評価のコメントが多かった。一時期、コメントに「ツーリストトラップ」という単語が続き、そのような思いは施設としてはないのだがとても心苦しかった。それらのコメントを見て誤解されないように、日々、店舗の趣旨や「またお時間があれば来店をお待ちしています」などのコメントを返すようにした。当時の担当者が地道に返信することで、ある程度平均点を取れるようになった。
  • 「基本情報」もしっかり登録するようにしている。一般の方から電話がかかってくる中で一番多いのが定休日と営業時間に関するものである。Webサイトよりも、GBPの方が自分たちで更新しやすいこともあり、台風などで臨時休業をする際はすぐに更新するように努めている。一方で「写真」を高い頻度で更新することはできていない。お客さんが投稿した写真の中には、古くなってしまったものもあるので、宮本さんのお話を聞いて更新していかなければならないと感じた。
  • 6月から、海外の個人旅行者向けに、当店で舞妓さんに会って写真が撮れるという体験商品をOTAで販売しはじめた。まだ予約フォームもOTAにしかない状態だが、GBPから動線を引いている。Googleマップにこのイベントの口コミ評価が入っていないので、Googleマップを見てOTAで申し込んでいるのかもしれない。
  • オーナー登録すると、毎月パフォーマンスレポートが届くが、この数値に対する分析やアクションができていないのが課題である。どんな検索ワードでGoogleマップを見たかというのもわかるが、当施設の場合、上位は住所か店舗名である。「ショッピング」や「スーベニア」などのワードで引っかかるようになると、うまく運用できているということかもしれないが、店名などで検索してきている時点で、すでに当施設のことを知っている段階だと思う。認識される前の段階での検索流入が必要だということはわかっているが、そのためのアクションが起こせていない。
  • 店名や住所での流入が多いのは、おそらくガイドさんやホテルのコンシェルジュによる検索が中心なのではないかと考えている。また、館内でパンフレットを配布しているのだが、そこにGoogleマップへリンクするQRコードを掲載している。一度では回りきれなかったのでまた再訪したという方も多く、そのような方がアクセスしている可能性もある。そんな再訪客が知りたいのは、営業時間、施設概要、アクセスぐらいではないかと思う。その場合、WebサイトよりもGoogleマップの方が見やすいと思うのでタイムリーに更新するようにしている。
  • 運用は2~3名で行っている。Instagram、Facebook、Youtubeはオンラインショップに飛ばす動線を作ったり、Facebookは記事もしくは有料広告からオンラインショップへの誘導なども行っている。Googleマップの返信などは、基本的には売り場の手が空いている人が行っている。投稿から約1週間以内で返信するようにしている。最近の翻訳ツールは優秀なものが多くあるので、それらを活用することで、時間をかけずに対応できているように思う。

グループワーク

グループワークでは、宿泊、飲食、体験等の類似業種別に4つのグループをつくり、それぞれの課題などを共有し、解決方法などを考えるディスカッションを行いました。各グループに対して、宮本氏からは以下のようなアドバイスがありました。

宮本氏:

  • 中小企業では運用体制に悩んでいるケースも多い。SNS、Googleマップなど、管理すべきものがたくさんある中、個別に担当者がいるという施設がみられたが、戦略的には統一して行った方が良いと思う。あわせて生成AIを活用していくのは重要なポイントになってくる。日々の業務、戦略など思考が必要な問題も、生成AIで大体のことが解決できる。
  • 飲食店に関しては、予約動線をしっかり作るべきである。ユーザーがGoogleマップを活用して飲食店を選ぶ際は、Googleマップで表示した中から6つほどを閲覧し、その中の3つに候補を絞り、そこから実際に行くお店を選ぶというパターンがよくある。ただし、予約ボタンを押すと、リンク先は日本語のページになっていることが多い。ページの一番下で言語を変更できるケースもあるが、わざわざこのような動きをする人は少ないので離脱の原因となる。
  • 体験に関する業種は他の業種に比べるとGoogleマップの効果はそこまでない印象がある。直接の予約率を上げることはできなくはないと思うが、引き続きOTA経由の予約が主流になるのではないかと思う。一方で直接予約を増やす対策として、予約システムがない事業者の場合、来店してから支払う流れで良ければ、GBP上で無料で動線は作れる。ある温泉施設では、「入場チケット」というボタンを設定し、ここを押すと指定したリンク先に飛べるようにした。この場合、オンライン上で予約はできないが、値段を確認することができ、現地へ向かうという動線になる。一方で、事前予約が必要な場合は、自社で予約フォームを構築し、Googleマップで動線を作る必要がある。
  • これまでほとんど取り組みを行っていない事業者さんの場合、まずは先程お伝えした基本的な手順に沿って情報、特に営業時間はしっかり更新してほしい。その上で継続的に必要になることとして、1つ目は投稿や写真などの更新。週に1回は上げていくと良い。ネタがつきてきた場合、商品などを取り扱う小売店であれば、具体的な商品画像などをアップすると良いのではないかと思う。また、動画を出していない方が多いので、出していくとさらに良い。
  • また口コミを増やす対策も行っていただきたい。口コミの内容から訪問先を探す方もいるので、口コミの数も上げていくことも重要である。口コミの母数と評価点数はGoogleマップの上位表示につながる。GBP内には、「レビューを依頼」というボタンを押すとURLが発行される。このURLでQRコードを作り、名刺に貼る等によって増やしていくと良い。
  • 私も普段から思考の整理を行うために生成AIを活用している。「チャットGPT」や「Gemini」などさまざまな生成AIがあるが、今おすすめしたいのは「Perplexity」。質問したら回答が届くだけでなく、同業種での具体的な参考事例やそのURLが届くのが特徴。今後生成AIを活用する機会を増やせば、時間不足や人手不足の問題が解決していけるのではないかと思う。

開催後、参加者の皆様からは、

「グーグルビジネスのアカウントの重要性は意識していたつもりでしたが、そこまで頻繁に更新した方が良いという意識はなかったので、とても有意義でした。」

「GBPの運用において、ボタン機能の活用や生成AIの活用などを通じてインバウンド集客を伸ばせることを学び、とても有意義な時間となりました。」

「外国人が旅行する時に検索するサイトが日本人とは違うといった目線の違いに気が付けて良かったです」

といった感想をいただきました。
引き続き「京都インバウンドカフェ」にご注目ください。

京都インバウンドカフェについて詳しくはこちら

CONTACT

本件に関する問い合わせ先

公益社団法人京都市観光協会 企画推進課 マーケティング担当

075-213-0070

marketing@kyokanko.or.jp

本レポートの関連事業