2022年度「インバウンドイノベーション京都」の成果を報告する「第5回京都インバウンドカフェ」を開催しました(2023年7月11日(火))

UPDATE :
2023. 08. 24

SUMMARY

2022年度「インバウンドイノベーション京都」に採択された7社から、伴走支援を通じて進めた取り組みや成果、課題、今後の方針などをご報告いただいた。マーケットインの視点に基づくコンテンツ企画や、他の事業者とのマッチング、海外情報拠点やホテル・OTA等の目利きによる検証、商品特性に応じた販売先の紹介等、それぞれの課題に応じた伴走支援メニューを効果的に活用いただきながら、試行錯誤している様子を共有いただいた。

2023年7月11日(火)、これからのインバウンド向けコンテンツのあり方を考える交流イベント「第5回京都インバウンドカフェ」を開催しました。
当協会が2022年度に立ち上げたインバウンド向け観光コンテンツ造成支援プログラム「インバウンドイノベーション京都」に採択された7事業者から、企画したコンテンツの概要をはじめ、伴走支援を通じて行った取り組み内容や成果・課題、今後の方針などをご報告いただきました。
その後の名刺交換会&交流会では、参加者から報告者に熱心に質問する様子や、参加者同士でお互いの取り組み内容や課題について共有する様子が見られ、非常に活気のある会となりました。

(1)イントロダクション
(2)2022年度「インバウンドイノベーション京都」の採択事業者の取り組み報告

  • 株式会社ニシザワステイ 様
  • 株式会社高津商会 様
  • 株式会社レオタニモト(MOTO TOURS JAPAN KYOTO) 様
  • アミタ株式会社(京都ハンディクラフトセンター) 様
  • ウィズシード・ホスピタリティ・マネジメント株式会社 様
    (hotel tou nishinotoin kyoto by withceed)
  • 一般社団法人Discover Noh in Kyoto 様
  • 株式会社Kyoto Meditation Center様

(3)「インバウンドイノベーション京都 観光コンテンツ造成支援ハンドブック」の紹介と2023年度「インバウンドイノベーション京都」について
(4)名刺交換会&交流会

報告1 株式会社ニシザワステイ 様

  • 平成29年創業で、一棟貸の宿泊施設をはじめ、コワーキングスペースや観光案内バー等を含む複合施設の運営、不動産事業や旅行業などを行っている。
  • 今回、我々は「人の心に会いに行く-京都に息づく心のカケラを集めにいこう-」というタイトルでコンテンツづくりを進めている。京都の価値は「人」にあり、受け継がれるのは技術だけではなく、その「心」だと考えている。例えば伝統産業の担い手等、京都の文化を育む人”と対話ができる新しいスタイルの京都観光を実現することを目指している。
  • ターゲットとしては京都市観光協会が掲げている「無形資産に価値を見出し、新しい体験に投資し、成長を楽しむことを重視する人」を意識しつつ、特に20-30代が中心のモダンラグジュアリーを考えている。
  • 今年2月にはアメリカの海外情報拠点担当者やOTAの方向けにファムトリップを実施した。実際にやってみることで、対談に入る前に、作品などを見ながら軽く会話をするブリーフィングの時間が重要であること等がわかった。
  • 現在は、職人との対談に加え、オリジナル作品をオーダーできるオリジナルコンテンツを市内のラグジュアリーホテルと共に計画している。
  • 今後は、話者との関係性づくりや、対談する空間・場所の開拓、コンテンツのさらなる磨き上げなどを行っていきたい。先日、観光庁の観光再始動事業の採択を受けたため、こうした補助事業も活用しながら取り組みを進め、2024年度中には正式にリリースができればと考えている。
  • 「インバウンドイノベーション京都」によって、外部からの貴重なアドバイス、マーケットインでの商品づくりの視点、テストマーケティングの機会、関係性とのネットワークの構築などの機会を得ることができた。

報告2 株式会社高津商会 様

  • 大正7年に創業した当社は、古代から近代まで、あらゆる時代を再現する“小道具”の提供を行い、日本の映画やテレビの制作に携わってきた。特に「時代劇」をはじめ、「戦国時代」に活躍した人物が着ていたとされる甲冑を数多く有しており、この“装飾美”や“機能美”を体験頂くコンテンツとして甲冑体験・小道具体験を提供している。
  • 欧米の方や歴史好きな方を主なターゲットとしており、単に着付けを行うだけでなく、映画美術ならではの技術などをしっかりと解説するようにしている。着付から撮影までは1時間程度であるが、プロのメイク等のオプション等も選べるようになっている。
  • また、撮影用の照明に映える特殊な銀箔を刀に貼りかえる金替体験も提供している。プロがやれば簡単そうに見えるが、実際にやってみると難しい。また、何度も貼り替えができるように卵の白身を使っていることも特徴である。こうした経験から映画美術の技術の一面を知っていただくことができる。
  • 「インバウンドイノベーション京都」によって、自社の強みや独自性を改めて認識することができたとともに、たくさんのアイデアをいただくことができた。また、他の事業者との連携による事業展開もさらに色々な可能性があると考えている。
  • 昨年の秋頃から問い合わせが増えている状況だが、多言語対応やインバウンドの受け入れ体制強化が課題である。また、体験していただく上でより快適な環境を整えていくとともに、事業としてしっかりと確立できるようにしたい。映画美術の知識や技術の継承も重要な課題であるため、地域や大学等との連携も図っていきたいと考えている。

報告3 株式会社レオタニモト(MOTO TOURS JAPAN KYOTO) 様

  • 大正14年創業で、現在はバイクの販売やレンタルバイク業などを行っている。MOTO TOURS JAPAN KYOTOはバイク旅行の総合プロデュースを行う、バイク旅に特化した旅行会社である。
  • 公共交通手段がないエリアにも時間を気にせず行けること、隠れた名所や混雑を避けたルートづくりができること、バイクに乗るということが移動そのものの楽しみになること等が、バイク旅行の良さである。
  • 「インバウンドイノベーション京都」では、西京エリアを中心とした市内をめぐるルートや、走ることそのものを楽しみたい方のために郊外や遠方まで行くツアー等も検討した。また、HONDAからの委託でタイからのお客様を案内したり、アルゼンチンの「Emilio Scotto World Tours」を3週間エスコートする等、国内企業や海外から依頼されてオーダーメードのツアーを企画・実施することも多い。
  • バイクツアーの実施によって地方創生にさらに寄与していきたいという想いがあるため、募集型ツアーの造成や情報発信を強化するとともに、アテンドスタッフの育成や受け入れ体制の強化、駐輪場が確保できる立ち寄り先の開拓等を行っていきたい。また、バイクツアーの認知度向上とあわせて、外国人が日本でバイクに乗る場合は国際免許が必要になること等、タビマエの段階から積極的に情報発信を行うこと等が課題である。
  • 伴走支援を通じて、改めてバイクという移動手段の魅力や可能性に気づくことができた。

報告4 アミタ株式会社(京都ハンディクラフトセンター) 様

  • 京都ハンディクラフトセンターは日本国内・世界各国のお客様が「買物」「食事」「工芸/文化体験」をワンストップでお楽しみいただける複合商業施設である。
  • 今回、何か新しいことに取り組みたいと思い企画したのが「訪日旅行者の子連れ旅行を応援「京都を体験する」キッズクラブサービス(仮称)」である。夫婦だけでゆっくり観光する時間がほしい、子どもにも日本文化を学べる機会や地元の方と触れ合う機会を与えたいというニーズがあるのではないかという想定のもと、当施設内で様々な体験を提供するプログラムである。
  • ターゲットは普段からベビーシッターやナニーの利用経験があり、36か月から10歳程度の子どもを連れている外国人旅行者をイメージしている。現時点では、食事対応が難しいため、時間としては13:00~17:00で、料金の中には当館7階にある有料のキッズスペース「SAIKA あそび場」https://www.kyokanko.or.jp/report/goodpractice/04)の利用や、専属のベビーシッター(1家族に1名)、フリードリンク、伝統工芸/文化体験ワークショップ(自由選択)などが含まれている。子どもはその時の気分によってやりたいことも変わるため、オールインクルーシブにしている。
  • 「インバウンドイノベーション京都」を通じて、ラグジュアリーホテルに往訪して意見をうかがったり、モニターツアーを実施したが、どちらかというと子供を預かってほしい時間帯としては夕食時であったり、親子で一緒に体験したいニーズがあること等がわかった。これらも進めてみてわかったことなので、今後改めてどういった形にしていくかを考えていきたいと思っている。

報告5 ウィズシード・ホスピタリティ・マネジメント株式会社 様(hotel tou nishinotoin kyoto by withceed)

  • 2021年4月に東本願寺の近くに開業した121室のホテルである。今回提案しているのは「人と人の出会いを通じて京都の魅力を伝える「cafe & bar oku」京都の小さな 社交場体験」である。
  • 提案の背景としては、当ホテルの1階にある「cafe & bar oku」を活用し、旅行者と地元の方が交流できる機会を創出することで、より京都の奥深い魅力を感じていただきたい、そして京都へのリピーターを増やしていきたいという想いがある。また、近年オープンしている他のホテルとの差別化を図ることも課題の一つである。
  • オープンしたばかりの我々では地元とのネットワークが乏しく、地元の方に、ここに来て旅行者の方とコミュニケーションをとって下さいとお願いをしても、簡単に来ていただけるものではない。例えば、地元の方は飲食費を50%オフにするとか、人数限定にはなると思うが学生をサポーターとして登録して活躍していただくとか、来てもらいやすくなる仕組みをもっと検討する必要があると思っている。
  • 「インバウンドイノベーション京都」を通じて、「社交場体験」を形にしていくアドバイスをいただいたり、普段であれば接点が持てないような事業者さんとの情報交換の場を設けていただいた。また、人手不足の問題等もあったが、外国人の採用を行う上で効果的な組織をご紹介いただいたりと様々な支援をいただいた。商品化に向けてまだまだやるべきことはあるが、引き続き取り組んでいきたい。

報告6 一般社団法人Discover Noh in Kyoto 様

  • Discover Noh in Kyotoは能楽研究者や能楽への造詣が深い通訳者・翻訳者・ガイド等によって組織されている。
  • 能と京都は非常に深いつながりがある。能楽師は100名以上おり、公演は毎週末どこかで行われている。また、工芸・食・酒・祭・社寺など能の演目ともゆかりのあるモノ・コトが多いことも特徴である。
  • ガイドや学生向けに、能の魅力をどう伝えるかを学んでいただく研修などを行うことが多かったが、旅行者の方々にもより深く能の魅力を楽しんでいただくため、色々と企画をしているところである。例えば、大原にある能楽師のご自宅にお邪魔して、ご自宅にある能舞台で舞を間近に見せていただいたり、装束や能面などを見ながら解説をしていただいた後に所作を体験するものである。このプログラムは世界最大級の旅ナカ予約プラットフォームであるGetYourGuideが実施しているキャンペーン「Discover Kyoto with GetYourGuide」https://www.kyokanko.or.jp/news/20230721)にも採用された。
  • また、祇園祭も能と関係が深く、能とゆかりのある山鉾を案内をした後に、ホテルの特別な空間で能楽師と交流ができるプログラムをHOTEL THE MITSUIさんとの連携で企画・販売したところである。
  • 「インバウンドイノベーション京都」を通じて、組織の法人化やプログラムの企画内容の磨き上げ、販売経路の開拓など様々な支援をいただいている。我々としては経営感覚がまだ乏しく、マーケティングについても勉強しながら取り組みを進めているところである。今後は、こうした我々のプログラムが京都の文化や観光にいかに貢献できるかというところを実証していけたらと思っている。

報告7 株式会社Kyoto Meditation Center様

  • Kyoto Meditation Centerは、欧米豪インバウンド顧客に対して京都の禅寺で坐禅ツアーを実施したり、アップル米国本社やハリウッド等をはじめとした海外で喫茶・坐禅ワークショップの開催などを行ってきた。
  • こうした経験から、特に欧米の方が求めているのは一過性の「体験」ではなく、自身の「成長」に繋がる経験がしたいということと、禅の智慧のユニークさを知りたいということを認識している。
  • そこで、坐禅を中心に庭園や喫茶等を組み合わせた体験ツアーを実施するとともに、5分間のプラクティスを実施するための動画コンテンツを視聴できるモバイルアプリをリリースした。これによって帰国後も京都や禅を身近に感じられるとともに、京都への再来訪希望も高まるのではないかと考えている。
  • 我々としては、こうしたプログラムを一緒に提供できる連携寺院を増やしたいと考えており、「インバウンドイノベーション京都」の伴走支援を通じてご紹介していただいているところである。中でも浄住寺さんでの庭園散歩、坐禅体験、精進料理を組み合わせたプログラムは、GetYourGuideの「Discover Kyoto with GetYourGuide」にも採用され、販売を開始している。
  • また、観光庁の「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」に採択され、さらなるブラッシュアップとツアーガイドの育成等を行っている。連携可能な寺院様や本ツアーのガイドとしてご活躍いただける方を募集しているので、ご協力いただける方はぜひお声がけいただきたい。

  

開催後、参加者の皆様からは、

「色々な事業者の方々の話が聞け、悩んでおられることや、押したいコンテンツの話がとても勉強になりました。」
「何人か、以前にインバウンドカフェでお話ししたり、顔を覚えてくださっていたりする方が出てきたので、このイベントは回数が増すほど有意義になっていくように感じた。観光協会の方にご紹介いただくと、特に話し始めやすい。」
「新ビジネス創出などいろいろな取り組みが分かり、良かった。」

といった感想をいただきました。

引き続き「京都インバウンドカフェ」にご注目ください。

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本件に関する問い合わせ先

公益社団法人京都市観光協会 企画推進課 マーケティング担当

075-213-0070

marketing@kyokanko.or.jp

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